タレントマネジメントの導入方法。優秀な人材の管理と育成を目指す
タレントマネジメントは企業で人材、人事を管理する際に有効な方法です。少子化対策や個人の能力に適した仕事の割り振りなど、モチベーション管理や業務改善を目的とした施策として昨今注目されています。どのような取り組みなのかを解説していきます。
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目次[非表示]
- 1.タレントマネジメントとは
- 2.タレントマネジメントの目的
- 2.1.人材を適切な場所に配置する
- 2.2.人材を育成する
- 2.3.社員に公平な評価を下す
- 3.タレントマネジメントが注目される背景
- 3.1.グローバル競争の激化
- 3.2.労働人口の減少
- 3.3.労働環境の変化
- 4.タレントマネジメントの導入手順
- 5.タレントマネジメントを成功させるポイント
- 5.1.導入目的・課題を明確にする
- 5.2.PDCAサイクルを回す
- 5.3.適切なシステムを導入する
- 6.優秀な人材を育成・管理するマネジメント手法
タレントマネジメントとは
人事・人材において採用する企業の増えてきたタレントマネジメントですが、どのような制度なのかは認知が広まりきっていません。制度の中身について確認しましょう。
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個人の才能と素質を管理・評価する制度
タレントマネジメントとは「タレント=従業員、雇用者」の持つスキルを最大限生かして働きがいややりがいを持ち、会社に定着することで企業価値を高めようという方策です。
人には必ず、得意・不得意な分野があります。それを人事や組織が把握することで、個人が最大限実力を発揮できる人材配置を行うことができます。 その結果、労働に対する満足度や収益の最大化につながり、人材が長く定着するための方法として期待されています。
主に優秀な人材、リーダー候補に対して行われる施策でしたが、近年は全ての従業員を対象に、モチベーション管理やパフォーマンスの最大化、最適化を目的に施策を採り入れる企業が増えてきています。
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タレントマネジメントの目的
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個人と企業を友好的に結ぶのがタレントマネジメントです。この施策を実行するに当たり、どのような目的と有用性をもたらすのか、解説していきます。
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人材を適切な場所に配置する
不得意なことを無理矢理やらせようとしても、効率は上がらず社員のやる気も出ないため、会社から離れる一因にもなりかねません。 働く人々が何を得意とするのか、どんな能力を持っているのかを個々に把握し、能力が遺憾なく発揮されるポジションやプロジェクトへ配置する必要があります。
人材を知るためには能力だけでなく、過去の実績や、どのような価値観で働いているのかといった心理面も知る必要があります。 結果的にスムーズなタスクの進行やモチベーションの上昇、生産性や効率のアップが期待できるでしょう。
人材を育成する
タレントマネジメントは人材を管理するだけでなく、会社全体の採用や育成にも関わってきます。社員を育成するためには、以下3点の主要な柱が存在します。
- 配置:既存社員が能力を発揮できるよう、最適な配置整理を行う
- 採用:配置整理によって不足ができたポジションへ、新たな人材を採用する
- 育成:タレントマネジメントにより明確になった、個人の特性やキャリアプランに沿うよう、育成計画を立てることが可能
タレントマネジメントは「次期リーダー候補の育成に最適」だと言われています。これは人材の把握により、能力に見合った効果的な育成計画を実行することができるためです。
社員に公平な評価を下す
高度成長期において、仕事とは「働けば働くほど儲かる」ものでした。しかし、長く続いた年功序列のシステムは今や崩壊しました。
スキルが不足した状態で同じポジションを占有しているのは、社員にとって不公平さや不利益を生み出す要因となっています。 「しっかりと仕事をした分、正しく評価される」というシステムは、評価に透明性と公平感を生み出します。
タレントマネジメントは、社員が「目標を持って仕事に取り組んだ結果、どのような成果を生み出したか」が評価される制度と併せて導入することをおすすめします。
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タレントマネジメントが注目される背景
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タレントマネジメントには、さまざまなメリットがあることを解説しました。この施策が注目される背景には、避けようのない社会問題や環境の変化が関わってたのです。
グローバル競争の激化
少子高齢化や不景気により国内需要は減少し、企業は世界へ目を向けざるを得なくなりました。世界にないものを生み出すというグローバル競争が激しさを増す中、求められる人材や経営戦略にも変化が出てきたのです。
かつてビジネスと言えば、協調性や質の良さが重要視されてきました。しかし変化の激しいグローバル社会を生き抜くためには、「スピード感を持ち、多種多様で新しい価値を創出すること」が不可欠になったのです。
そのためには、既存の年功序列や新卒の一括採用など、慣例のようになっている人材管理システムを変更していかなければなりません。個人にフォーカスするタレントマネジメントは、これからの企業に必要な戦略となってきているのです。
労働人口の減少
総務省や厚生労働省が発表している統計によると、生産年齢人口は1997年、労働人口は2000年をピークに緩やかに減少傾向にあります。労働する・しないの意思にかかわらず、働ける人は年々減っているのです。
人口の減少により、企業は余剰人材を抱える余裕がなくなりました。少人数でタスクを実行するためには、より効果的で適切な教育や人事配置が必要になります。少ない人数でスキルを最大限発揮し、個人それぞれで活躍することが求められるようになったのです。
新卒採用や終身雇用が見込めない中、「今いる人材でより多くの価値を創出するため」に、タレントマネジメントの効果が期待されています。
労働環境の変化
終身雇用がメインの時代と比べて、より自由な働き方を選ぶ人が増加しました。副業や転職、リモートワークやフリーランスの採用など、多様な働き方により労働環境は大きく変化したのです。
以前のビジネスシーンでは、個人の価値観は社会との仲間意識や会社貢献、会社への依存など「集団」がメインでした。今では仕事のやりがいやキャリアプラン、ワークライフバランスなど「個人」に対しての価値観が主体です。
労働においての満足度やモチベーションは、優秀な人材を定着させる大きなファクターとなっています。将来へのキャリアを共有し、やる気を維持するタレントマネジメントは人材管理において重要な施策となっていくでしょう。
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タレントマネジメントの導入手順
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タレントマネジメントを実際に導入するためには、大きく分けて4段階の手順があります。手順を抜きにタレントマネジメントを導入してしまうと、施策がうまく機能しない恐れがあります。それぞれに注意すべき点が異なるので、ひとつずつ確認していきましょう。
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導入の目的を決定
企業の活動には、明確なゴール=目的が必要です。それを全社員に周知・徹底するために経営理念があります。この経営理念を達成するために経営戦略があり、その経営戦略を遂行するために人事戦略を行います。
中~長期的事業を目的とした場合、どのような担当の仕事があり、遂行のためには何のスキルを持ったタレントが適しているか、数はどの程度必要かという詳細があって初めてタレントが活躍できる場所が生まれます。 目的にいたる詳細を明確化すればするほど、マネジメントが効果的に作用する可能性は高まるでしょう。
経営と人事、その両方をリンクさせることがタレントマネジメントにおいて重要な点です。
タレントの把握
次に、必要なタレントの把握、必要なポジションの洗い出しを行います。
タレントの把握に必要な情報としては、氏名から始まり、学歴、経歴、資格の有無、配属先、参加したプロジェクト内容からそれにいたる直近までの評価まで、人材に関するありとあらゆる情報を一括に集約、目に見える形で蓄積していきましょう。
表面的な来歴だけではなく、仕事においての価値観や自己評価など、内面的なことも可能な限り集めておくと良いでしょう。人は常に変化していきます。定期的にアップデートしていけるよう、関係各所での情報共有が可能なシステムを構築しておきましょう。
人材の配置と活用
準備が整ったら、いよいよ人材の配置を考えます。ここでは、現場の管理者によるタレントの現状把握が重要になります。管理者が気を付けるべきポイントは以下の3点です。
- タレントが予想通りの能力を発揮できている
- タレントのポテンシャルにおける能力の向上が見られる
- モチベーションの維持、向上が確認できる
管理者が上記の状態を把握をしながら、組織全体で情報共有ができるよう配慮しなければなりません。タレントマネジメントの理解、知識が不足していると、システムが形骸化する恐れがあります。 目的達成における経営戦略と人事戦略の意識付けが、マネジメント成功には必要不可欠になります。
モニタリング
タレントマネジメントを実施したあとは、必ず継続的なモニタリングを行いましょう。人の気持ちや労働環境は、想定以上に複雑で流動的です。社内アンケートや個別ヒアリングにて、仕事とのアンマッチが起きていないか注視しておきましょう。
施策の導入直後は不慣れも手伝って、教育や指導が不十分だったり、計画に狂いが生じる可能性があります。常に柔軟な対応ができるよう、備えておく必要があります。
モニタリングを実施する際は、評価だけ、アンケートだけで終わらすのは非常にもったいないことです。社員からの声を反映するよう、常に現場を改善するという姿勢でいましょう。
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タレントマネジメントを成功させるポイント
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タレントマネジメントは、有用性が認められています。運用を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
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導入目的・課題を明確にする
タレントマネジメントを実施していくと、現場での要望や改善の声が上がってくることでしょう。しかしその声に従ってあれこれ機能を追加したり、無目的に施策を増やすと、かえって目的達成の障害になる恐れがあります。 大切なのは、「どのような目的を持ってマネジメントをしているか」ということです。目的達成のためにはどのような課題・ハードルがあって、それをどう解決させるかという認識をブレさせてはいけません。 目的の上での戦略があって、初めて成果は上がっていくのです。個人の能力を発揮しながらも、業務は集団で行っていきます。集団が同じ目線に立って進むためには、目的が明確になっていることが必要なのです。
PDCAサイクルを回す
タレントマネジメントは、施策して終わりではありません。むしろ、施策してからが本番と言えるでしょう。以下のPDCAを継続して回し続けることが大切です。
- Plan=採用、育成計画:企業の課題を洗い出し、課題解決にふさわしい人材の確保、育成計画を立てる
- Do=配置:目的達成、育成計画にのっとった人員を配置する。その際、経営戦略と人事戦略が意識できるよう、目的意識のすり合わせを行うと効果的
- Check=評価:異動後の仕事の成果を評価する。業績と個人の貢献度を照らし合わせ、公平な評価を下す
- Action=能力開発、異動:不足している能力があれば、研修などでフォローする。本人が希望、あるいは成長のために異動も視野にする
計画だけ立てて満足してしまったり、問題点があるにもかかわらず改善しないままPDCAを放置してしまったりすると、施策の失敗につながります。 管理層だけでなく、社員の意見も踏まえて見直しを行い、プランをバージョンアップしていくことを意識していきましょう。
適切なシステムを導入する
タレントマネジメントを導入するためには、自社に合ったシステムを採用する必要があります。導入するに当たり、以下のポイントに着目して選びましょう。
- 目的が達成できそうなシステムの内容になっているか
- 誰でも使いやすいインターフェースになっているか
- 自社に合わせてカスタマイズ可能か
- 価格は継続して支払うことが可能か
人事情報は膨大になりがちです。自社の管理体制に合わせてシステムを導入しましょう。
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優秀な人材を育成・管理するマネジメント手法
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長く続いた年功序列のシステムは今や崩壊し一人ひとりの才能に基づきスキルを評価される時代になってきました。とはいえ、人には必ず、得意・不得意な分野があり、才能を正しく把握し生かすタレントマネジメントが必要になってきます。
優秀な人材を育成・管理するタレントマネジメントは施策を導入すれば終わりではありません。明確なゴールを定めて、PDCAサイクルを回し、モチベーション管理やパフォーマンスの最大化、最適化を進めていきましょう。