新卒の離職率が高い場合の対策。離職理由の分析や採用時の注意点
面接や試験など人件費をかけて新卒を採用しても、会社に定着してくれなければ人事コストばかりはね上がり、仕事も進みません。対策を打っているのに結果が出ていないのは問題です。理由の分析や離職率を下げる施策をぜひ試してみましょう。
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目次[非表示]
- 1.新卒の離職率はどのぐらい?
- 1.1.早期離職は全体の約30%
- 1.2.産業によって離職率は異なる
- 2.離職する理由は?
- 2.1.人間関係が上手くいかない
- 2.2.給料に対する不満
- 2.3.仕事が合っていなかった
- 2.4.業務量の多さと労働時間の長さ
- 3.離職率の高さが引き起こす問題
- 3.1.採用・育成コストの損失
- 3.2.他社員のモチベーションの低下
- 3.3.企業全体のイメージダウン
- 4.離職率を下げるための施策を紹介
- 4.1.メンター制度の導入
- 4.2.キャリアデザインを作成する
- 4.3.相談窓口を開設する
- 5.採用のミスマッチを減らす施策も検討
- 5.1.体験入社を導入する
- 5.2.良い面だけでなく悪い面も伝える
- 5.3.リファラル採用の活用
- 6.定着率を上げる施策も導入しよう
- 6.1.ワークライフバランスの実現をサポート
- 6.2.評価制度を適正化する
- 7.新入社員がのびのびと働ける環境構築が鍵
新卒の離職率はどのぐらい?
大学を通って卒業した、新卒の離職率の統計をまとめました。統計によると、中学卒、高校卒、短大卒でも離職率には共通したある傾向がありました。離職率にはどんな傾向があるのか、見ていきましょう。
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早期離職は全体の約30%
厚生労働省が2020年10月に公表した調査結果では、2017年3月に新規大卒で入社した従業員のうち、32.8%は3年以内に離職してしまうという統計になりました。 早期退職者のうち、1年以内に仕事を辞めてしまう人は11.6%、2年以内は11.4%、3年以内は9.9%と推移していきます。
1年以内という短期間で離職してしまう人が最も多く、勤続年数を重ねるごとに離職率は少しずつ低下していきます。この傾向はどの年代においても変わりません。 新卒入社後3年以内に会社へ定着してくれると、勤務を長く続けてくれるということでもあります。
産業によって離職率は異なる
産業によっては、離職率に大きな違いが出ています。前述の調査結果では、2017年3月に入社した大卒者の3年以内離職率を見てみると、宿泊業・飲食サービス業が52.6%と圧倒的に高く、半数以上が1年以内に離職してしまうという結果が出ています。
次に、生活関連サービス業・娯楽業の46.2%、小売業の39.3%が続いています。いずれも企業と雇用者のマッチングができておらず、就業後にギャップを感じて離職している場合が多いようです。
逆に離職率が最も低いのは電気・ガス・熱供給・水道業の11.4%です。鉱業・採石業・砂利採取業も14.0%と低く、エネルギーやインフラ関係の定着率の高さがうかがえます。
参考:新規大卒就職者の離職状況(平成29年3月卒業者)|厚生労働省
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離職する理由は?
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離職する理由はさまざまですが、そこには新卒者ならではの離職してしまう共通点がありました。若者が短い間に離職してしまうのはなぜなのか? その理由をひも解いていきます。
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人間関係が上手くいかない
どんなに世の中が便利になったとしても、私たちは人を相手に商売し、人と仕事をします。職場の人間関係が合わずに辞めてしまうのは、新卒固有の悩みではないでしょう。 求人情報だけでは、職場の雰囲気は伝わってきません。入社後のギャップに戸惑う新卒者は多いようです。
上手くいかない主な理由として、以下のことが挙げられます。
- 先輩社員とどのように意思疎通をしていいのかが分からない
- 仕事の相談や頼れる人が見つけられない
- 上司や周囲の人に声を掛けられない
上記のような状態が長く続くと、孤立感が高まって仕事に対するモチベーションは低下します。やがて仕事場に行くことそのものがストレスになり、離職につながるのです。
給料に対する不満
求人票に書いてあった賞与や残業代を満額もらえると期待していたのに、業績が良くないことなどでもらえない、あるいは少ないなどの不満を理由に離職を検討する人もいます。 給与への不満は企業側としてもすぐに対応できないことが多く、早急な対策が打ちづらい点も企業の頭を悩ませている点です。
入社して半年も経てば、業務内容に見合った給料がきちんと支払われているかは目に見えてくる頃です。その頃に離職すれば、第二新卒枠として再出発も可能です。給料がより良い会社を求めて退職する新卒者も少なからずいるでしょう。
仕事が合っていなかった
まだ経験が少ないからと言って、コピーとりやファイル整理など、誰でもできそうな仕事ばかり与えられては、やる気も起きません。 また、お茶くみやトイレ掃除など、業務と直接関係なさそうな仕事ばかりだと、何のためのに働いているのかが分からなくなってしまいます。
仕事に対して意欲のある社員ほど、能力を発揮する機会がないとストレスを抱えるでしょう。 求人でイメージした仕事内容や業務量にギャップがある場合も、離職につながる理由になります。
業務量の多さと労働時間の長さ
新人のときは業務内容を覚えるのに精一杯で、余裕がない状態です。会社としては仕事を回すためにやむなく振った業務でも、量の多さに心がパンクしてしまい、大きなストレスを抱えている可能性があります。
仕事は必ずしも、予定通りに進むとは限りません。業務の進み具合では、どうしても残業や休日出勤を余儀なくされる状況もあります。
予定外の長時間労働や、有休が希望通り取得できないと、不満を覚えて離職するケースも少なくありません。応募時と実際の業務にギャップを感じ、不満やストレスがたまった結果、離職につながっていると考えられます。
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離職率の高さが引き起こす問題
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効果的な対策は、まず何が問題であるかをきちんと把握するところから始まります。離職が実際に多い場合の問題点を、ひとつずつ見ていきましょう。
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採用・育成コストの損失
新人を採用するための面接や試験、それに伴う情報収集や整理など、タダでは実施できません。どれも採用コストとして経費になっていきます。採用コストをかけせっかく入社させても、今度は育成していかなければなりません。
教育を担当する社員はその間、営業をしたり事務をしたりする時間を、新人教育に当てているため、会社の利益を直接的には生み出せません。新人社員が生産性を上げるためには、時間とお金が必要なのです。
1人の若手新入社員が3年目に退職してしまうと、約1500万円の損失が生まれるとまで言われています。人を雇うのは利益を生むばかりではないのです。
他社員のモチベーションの低下
高い離職率は、既存の社員にまで影響を及ぼします。自社に愛社精神や帰属意識を持っていたとしても、すぐに辞められては「うちの会社ってそんなにダメなのか…」と疑念や悲しみを抱いてしまうかもしれません。
さらには、新人教育の間にたまっていた仕事や、新人に割り振っていた仕事の再分担が発生して、生産性自体が落ちてしまう可能性もあります。
半年でも経験を積んだ社員が退職してしまうと、その穴埋めにまた採用を一から始めなければならず、社員の負担は増します。たった1人の退職が、多方面に影響を及ぼすのです。
企業全体のイメージダウン
離職した人が起こす仕事への影響は、社内に留まりません。 取引先から見てみれば、担当していた社員がすぐに入れ変わり誰が担当か分からない、窓口になる社員が不明でやり取りがスムーズにいかないなど、信用を失いかねない事態に発展することも考えられます。
その結果、「あの会社に入った新人はすぐ辞める、労働環境や経営が危ういのではないか?」とネガティブなイメージを持たれる可能性もあるのです。 さらには、何も知らない応募者から見れば、離職率の高さは「ブラックなのでは?」「入社しても続かなさそう…」という印象を与えてしまい、応募率の低下を引き起こします。
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離職率を下げるための施策を紹介
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何も良いところがない離職率の高さに、頭を抱える人もいるのではないでしょうか。離職率を下げるために効果が期待できそうな施策を紹介します。
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メンター制度の導入
新卒社会人は社会に出てきて間もない場合が多く、ビジネスマナーや社会人としての素養が圧倒的に足りません。1人で業務に取り組んでも「どうしたらいいか分からない」状態で効率も悪く、相談相手にすら困る状況です。
そんなときに効果的なのが、メンター(指導員)制度の導入です。先輩の社員や上司、別部署の管理職やリーダーなどがメンターになり、新人に寄り添って教育していく仕組みです。 仕事の愚痴からアドバイスまで、メンターにはなんでも相談してもらいましょう。
孤独は離職を生むきっかけになります。新入社員・直属の上司・メンターとランチミーティングなどを定期的に行うのも良いでしょう。
キャリアデザインを作成する
キャリアデザインとは、職務におけるスキル獲得や、将来どのような自分になりたいかを長期的に設計していくものです。業務における積極性や向上心を高め、計画的に実現する目的で作成します。
人は、目標がないと道に迷います。どのような自分になりたいかという目的がなければ、努力する方法や、どんな技能が必要かは分かりません。長期的な視野を持ってもらうことで、早期離職の防止につながると考えられています。
優秀な後継者を育成する計画である「サクセッションプラン」を導入することも有益です。「長くがんばれば幹部になれるかもしれない!」という明確な目標がモチベーションアップにつながります。
相談窓口を開設する
上司や同僚などの「同じ会社の人」には、なかなか相談しづらく、本音まで話せません。いつでも利用できる相談窓口の設置は、新入社員だけではなく既存社員の安心感にもつながります。
総務や人事担当が気を付けていても、ハラスメント行為や不正行為はいつ発生するか、巻き込まれるか分かりません。 相談窓口を設置する際は、相談した人の匿名性がしっかりと守られなければなりません。窓口の客観性を守り、早めの相談窓口の利用を促せます。
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採用のミスマッチを減らす施策も検討
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せっかく入社しても1年も経たずに離職してしまうのは、イメージと現実とのギャップが起きているからです。ミスマッチを減らすため、以下の施策はとてもおすすめです。
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体験入社を導入する
離職理由のひとつとして、人間関係の悪さがありました。社内風土や雰囲気は求人票には載せられず、職場がその人に合うかどうかは直接見てもらうほかありません。体験入社なら、入社後のギャップを減らす点でとても効果的な施策です。
体験入社は、直接職場が見える貴重な体験です。1日数時間の見学のような体験から、1カ月の間仮の新入社員になって働いてもらう体験方法まで、やり方はさまざまです。
短い間でも、実際に業務に就く場合の職場環境や人間関係を知ることができます。そこで好印象を持ってくれれば、入社後もスムーズに仕事が始めやすいでしょう。
良い面だけでなく悪い面も伝える
求職者に良い会社だと思われたくて、つい良い面ばかりをアピールしがちです。しかし仕事の続けやすさは良い面の多さではなく、「悪い面がどれほどあるか」に左右されるのです。
入社後のギャップでがっかりさせないためにも、面接時や応募用紙には正直にデメリットも記載しましょう。 「業務量によっては休日出勤もあるが、よろしいですか?」など、あらかじめ想定しうるマイナスポイントを伝えておけば、仕事に対する覚悟や理解が深まります。
それを越えてなお「働きたい!」と思ってもらえれば、心強い従業員となってくれることでしょう。
リファラル採用の活用
既存社員の紹介で採用を決定する「リファラル採用」も、離職率を下げるには良い施策と言えます。 詳しい業務内容や自社のことをよく知っている社員だからこそ、マッチングの精度が高まります。
自社の仕事に対して適性があると思う人を紹介をしてくれます。 求職者も、入社前に会社の実態をリアルに知ることができます。入社のイメージがしやすく、ギャップが起きにくいというメリットがあります。 既存社員が求職者との橋渡しをしてくれるため、ミスマッチが起こりにくい構造になっているのです。
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定着率を上げる施策も導入しよう
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長く働いてもらうためには、離職率を下げつつも定着率が上がる施策を同時に展開できると、より効果が増します。
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ワークライフバランスの実現をサポート
近年では、プライベートと仕事との線引きをしっかりと分けたい若者が増加しています。その結果、ライフワークバランスが整った企業を選ぶ動きも増えてきているのです。
福利厚生や待遇の改善、拡充はもちろんのこと、勤務時間が必要以上に延びないよう留意しておきましょう。とくに、求人票などに記載のない過度な残業や休日出勤は大変嫌がられます。
対策として、テレワークの導入やフレックスタイムの導入、在宅勤務など「時間・場所・働き方」を自由に選べるようにしましょう。既存の従業員だけではさばききれない業務量の場合は、一部を外部サービスに委託することもおすすめです。
評価制度を適正化する
人事評価がどのように行われているのかという内容を明確に打ち出すことで、具体的な指標や目的が生まれます。適正に評価が下されることは、安心感へとつながるのです。
とくに、昇給や昇進の条件はしっかりと明示しましょう。不公平感なく、目標に向けて努力することができます。 やりたいことや目標が曖昧なまま働いても、モチベーションは上がりません。やる気ややりがいを生み出すことで、定着率アップが期待できるのです。
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新入社員がのびのびと働ける環境構築が鍵
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少子高齢化は歯止めがきかず、今後ますます拡大していく社会問題です。人材不足は各分野でますます深刻になり、新卒の新入社員を獲得するのは困難になっていくでしょう。 せっかく入社してくれた新入社員が長く、やりがいを持って仕事に取り組んでもらうために、上記の施策は有益です。会社は人が動かしています。従業員を大切にする会社こそ、顧客にも愛される会社となるのです。