ワークエンゲージメントの意味とは。社員をポジティブにする施策
ワークエンゲージメントは、組織を活性化させるために欠かせない要素です。長期にわたり定期的に測定しながら、向上を図る必要があるでしょう。ワークエンゲージメントの意味や重要性を解説し、施策例や測定方法も紹介します。
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目次[非表示]
- 1.ワークエンゲージメントとは
- 1.1.『活力』『熱意』『没頭』で満たされた状態
- 1.2.ワーカホリズム、バーンアウトとの関係
- 1.3.ワークエンゲージメントを高める要素
- 2.日本のワークエンゲージメント
- 2.1.ワークエンゲージメントが低い理由
- 2.2.従業員が健康で効率よく働くために
- 3.向上施策の例
- 3.1.ロールモデルとなる人材の育成
- 3.2.自社の理念や目標を明確に伝える
- 3.3.成果を感じられる仕組み作り
- 4.ワークエンゲージメントを測る方法と尺度
- 4.1.UWES、MBI-GS、OLBI
- 4.2.エンゲージメント・サーベイ
- 5.従業員が誇りを持って働ける環境を用意する
ワークエンゲージメントとは
ワークエンゲージメントとは、仕事に対し前向きで充実した心理状態を保っていることです。意味や似た言葉、意識を高める要素を解説します。
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『活力』『熱意』『没頭』で満たされた状態
ワークエンゲージメントとは、仕事に取り組む中で活力・熱意・没頭がそろった状態を指す概念です。意欲的で充実した心理的コンディションで業務に取り組めている様子を意味します。
近年の心理学はポジティブな要素を重視する傾向にあります。ワークエンゲージメントはこのトレンドから誕生した概念で、オランダ・ユトレヒト大学のシャウフェリ教授らにより2002年に提唱されました。
ワークエンゲージメントと混同されがちな概念に、ES(従業員満足度)があります。ESは従業員個人の満足度を測定することに主眼を置いたものであり、組織との関係性は考慮されていません。
一方ワークエンゲージメントは、個人と仕事(組織)との関係性を重視した概念です。従業員の貢献意欲を高め、企業の業績アップを図るという目的を明確に定めています。
ワーカホリズム、バーンアウトとの関係
ワークエンゲージメントと間違われやすい言葉に、「ワーカホリズム(ワーカホリック)」があります。
ワーカホリズムは、「強迫的で過度に一生懸命働く傾向」を意味する言葉です。仕事をしていない時間にも頻繁に仕事のことを考えたり、必要以上に仕事をしたりする状態を指します。
またワークエンゲージメントと対極の関係にある言葉が、「バーンアウト」です。「燃え尽き症候群」ともいわれます。
バーンアウトは過度に仕事をした反動で疲れ切ってしまったり、一生懸命に仕事をしても結果が出ないことへの不満感を抱いたりする状態を意味します。活力・熱意・没頭のいずれもない状態といえるでしょう。
ワークエンゲージメントを高める要素
組織の環境を改善し従業員の自己評価を向上させることで、ワークエンゲージメントは高まります。
組織や仕事の環境改善で効果が期待できる施策としては、上司や同僚によるパフォーマンスのフィードバックや、仕事の裁量権を与えることなどが挙げられます。従業員にコーチングを施す、トレーニングの機会を与えるなどの取り組みも一定の効果を期待できるでしょう。
従業員の自己評価が下がらない工夫も重要です。自己効力感・組織での自尊心を持たせたり、楽観性・積極性を育んだりすることで、ワークエンゲージメントを高められます。
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ワークエンゲージメントが低い理由
日本のワークエンゲージメントが低い理由の一つに、キャリアに対する長期的展望の持ちにくさが挙げられます。
これまでの日本の働き方は年功序列や終身雇用を前提としているため、一つの組織に依存しがちです。自分の仕事を俯瞰しにくく専門性やスキルも身につきにくいため、自律的なキャリア意識が育たない環境といえます。
ワークエンゲージメントには国民性が反映するともいわれています。自己評価の高い人が多い欧米人とは違い日本人は自分に厳しくなる傾向があるため、ワークエンゲージメントも低く見られがちです。
従業員が健康で効率よく働くために
ワークエンゲージメントを高めれば、仕事に対する従業員の心理的苦痛が軽減するため、企業のメンタルヘルス対策につながります。
多くの従業員のストレスを抑えることで企業を良い方向へ活性化させ、業績アップも期待できるでしょう。
またワークエンゲージメントが高い従業員は、やるべき仕事に集中できるようになります。職場におけるストレスの原因になりがちな人間関係に振り回されにくくなり、効率よく働けるようになることもワークエンゲージメントを高めるメリットです。
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向上施策の例
従業員のワークエンゲージメントを向上させられる施策例を紹介します。自社にできる範囲での導入を検討してみましょう。
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ロールモデルとなる人材の育成
従業員のワークエンゲージメントを高めるためには、行動や考え方の手本となるロールモデル人材を企業側で意識的に育てることが重要です。
仕事に対してポジティブかつ充実した姿勢を持つロールモデルがいれば、周囲の従業員も影響され全社的な意識の向上が期待できます。
厚生労働省の調査では、日本企業におけるロールモデル従業員の少なさが指摘されています。例えば技術系専門職では、ロールモデルとなる先輩従業員がいると感じている人の割合は約30%です。
チームを率いるマネジメント層には、単にチームを管理できる能力だけでなく、意欲的にチームを引っ張って部下を鼓舞できるリーダーシップも不可欠だといえるでしょう。
自社の理念や目標を明確に伝える
自分が何のために仕事をしているのかが明確になれば、従業員のワークエンゲージメントは高まりやすくなります。仕事の意味や目的を明確にしてもらうためには、自社の理念や目標をわかりやすく使えることが重要です。
企業が進むべき方向性を明らかに示し従業員と共有することで、従業員自身の企業に対する貢献意識が強まり、ワークエンゲージメントの向上につながります。
定期的に情報発信するなどして自社の理念や目標の伝達を制度化すれば、効率よく従業員の意識を高められるでしょう。
成果を感じられる仕組み作り
従業員自身が自分の長所を磨ける機会があれば、ワークエンゲージメントを高められる可能性があります。仕事に関する知識やスキルを得られる研修を定期的に実施したり、1on1の面談で従業員の希望を確認したりする施策が有効です。
報酬が成果に見合ったものであるか、評価制度を見直す必要もあるでしょう。成果を感じられる仕組みを作れば、従業員のストレスもたまりにくくなります。
成果に対する金銭的報酬だけでなく努力に対する心理的報酬も必要です。努力をしていてもなかなか結果が出ない場合は、フィードバックでサポートしましょう。
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ワークエンゲージメントを測る方法と尺度
ワークエンゲージメントは数値化することが可能です。組織に対する貢献意欲を測定する方法や尺度を紹介します。
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UWES、MBI-GS、OLBI
ワークエンゲージメントを測る方法としては、提唱者であるシャウフェリ教授らが開発した「UWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度)」が、最も多く採用されています。
UWESでは、活力・熱意・没頭に関する17の項目について、質問に回答する形式での測定が可能です。
MBI-GSやOLBIなど、マイナスの要素から逆説的にワークエンゲージメントを測定する方法もあります。どちらもバーンアウトの観点からワークエンゲージメントを測る方法です。仕事への無関心度合いや疲労感など、否定的な質問で構成されています。
エンゲージメント・サーベイ
ワークエンゲージメントの測定方法には、「エンゲージメント・サーベイ」と呼ばれる診断ツールを使用する方法もあります。従業員の心理的な充実度や貢献意欲について、包括的に問う内容の調査です。
「会社の目標や戦略を理解している」「ほかの人にも自分の職場を勧めたい」「公正に報酬を得ていると感じている」などの質問が、50~100問程度設けられています。
実施頻度は年2回~2年に1回程度が一般的です。会社に対する従業員の本音を引き出せるため、必要な対策を講じるための参考になるでしょう。
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従業員が誇りを持って働ける環境を用意する
ワークエンゲージメントとは、従業員が充実した心理状態で仕事に取り組めている様子を表す概念です。組織の環境や従業員の自己評価などさまざまな要因が影響しています。
意識を高めるためには、ロールモデル人材の育成や成果を感じられる仕組み作りが効果的です。測定方法も導入し、従業員がより働きやすい環境を整えましょう。