SEのスキルマップ作成で期待できる効果は?作成方法とポイントも
目次[非表示]
- 1.スキルマップとは
- 2.SEの人事にスキルマップが役立つ理由
- 2.1.スキルの把握が方向性の決定を助ける
- 2.2.足りないスキルに絞って研修できる
- 2.3.SEのモチベーションアップに役立つ
- 3.SEのスキルマップに必要な基本項目
- 3.1.要件定義・設計に関するスキル
- 3.2.ロジカルシンキング能力
- 3.3.プログラミングスキル
- 3.4.マネジメントスキル
- 3.5.コミュニケーション能力
- 4.SEの人事を助けるスキルマップの作り方
- 4.1.表計算ソフトでフォーマットを作る
- 4.2.スキルの評価項目と評価の段階を決める
- 4.3.対象者名と項目ごとの評価を入力する
- 5.SEのスキルマップを作るポイント
- 5.1.複数人で客観的に評価する
- 5.2.スキルに変化があれば更新する
- 6.足りないSEのスキルを育成するには
- 6.1.資格の取得をサポートする
- 6.2.外部研修を活用する
- 7.スキルマップでSEの人事を成功させよう
スキルマップとは
(出典) pexels.com
SEは専門的な知識や技術が求められる職種のため、業務を遂行させるには組織側が必要なスキルを明確化しなければなりません。現時点で働いているエンジニアのスキルを把握する取り組みも必要です。 双方の技能を把握できる仕組みの一つに『スキルマップ』があります。
スキルマップの役割と特徴を知って、自社の育成・採用に生かしましょう。
業務に関するスキルを「見える化」したもの
スキルマップはある組織で業務遂行に必要なスキルと、業務に携わる社員が持っているスキルを可視化した表です。エンジニアに限らず、さまざまな業界でスキルマップは用いられます。
例えば『特定のプログラミングに関する習熟度』というスキル項目を用意し、社員に点数を付けて評価します。スキルを可視化することで、業務担当者の人選や必要な工数の洗い出しが可能です。 専門的なスキル以外に、コミュニケーション能力やマネジメント能力といった対人に関わるスキルも含みます。
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SEの人事にスキルマップが役立つ理由
(出典) pexels.com
SEを抱える企業の人事業務においては、スキルマップが育成や採用の成功に大きく関わってきます。なぜスキルマップはSEの人事に役立つのでしょうか。
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スキルの把握が方向性の決定を助ける
一口にSEといっても、Webサイトの開発に携わるのかアプリケーション開発に携わるのかによって、求められる知識や技能は変わってきます。 ヒアリングや提案をメインにするSEとプログラマーに近い役割を担うSEでも、重要視したいスキルが違うでしょう。
システム開発では一概に『開発スキル』とはくくれません。 細分化されたスキルマップがないと、自社や常駐先での業務に必要な能力と人材が持つ技能にズレが生じやすくなります。誰が何のスキルに秀でているのかを目で見て分かれば、適切な人選が可能です。 人材育成でもスキルマップから社員の得意・不得意領域を見極められ、社員のキャリアを含めて今後の方向性を決定しやすくなります。
足りないスキルに絞って研修できる
SE研修を行うにあたっては、現状のエンジニアがどの程度のスキルを持っているのかを把握する必要があります。
すでに持っているスキルと比較して、研修内容が簡単すぎても難しすぎても効果を最大化できません。 スキルマップによって現状のスキルを把握すると、自社のSEたちに不足しているスキルにのみ絞って効率的に研修できるようになります。
予定しているプロジェクトのために育成や採用を考えている場合も、スキルマップから足りない技能が分かると見通しを立てやすいでしょう。必要に応じて新たな人材の採用も視野に入れ、計画的な育成を進められます。
SEのモチベーションアップに役立つ
スキルマップは現状の把握の他に、もう一つ重要な役割があります。それは『成長の可視化』です。スキルマップを定期的に更新して以前のスキルマップと比較すれば、エンジニア自身が自らの成長度を把握できます。
成長と評価の関連付けができ、評価を高めるために取り組みたいことを明確に提示できるのも導入のメリットです。ゴールが見えているとSEのモチベーションが上がりやすくなります。 スキルマップをもとにしたフィードバックはSE一人ひとりの意欲を上げ、ひいてはチーム全体のモチベーションアップを向上するでしょう。
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SEのスキルマップに必要な基本項目
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SEのスキルマップを作成するにあたって重要なのは、どのようなスキルを項目として設定するかです。人事担当者が覚えておきたいスキルマップの項目を5種類紹介します。
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要件定義・設計に関するスキル
要件定義はシステムを開発する前の段階で行う業務です。クライアントからどのようなシステムが欲しいのか聞き取りを行い、必要な機能を洗い出した上で『要件定義書』に落とし込みます。
設計は要件定義書をもとに実装する機能やクライアントが快適にシステムを使うためのシステムを計画し、実際にシステムを設計する作業です。要件定義のときと同様、計画書を作成します。 上流工程に関わるSEにとっては、どちらのスキルも欠かせません。クライアントのニーズをくみ取って、実際のシステム設計につなげられているかが評価ポイントです。
ロジカルシンキング能力
クライアントからのヒアリングは、単に聞き上手であるだけではこなせません。顧客企業の中にはシステム開発の知識がない担当者も、少なからずいるからです。
エンジニアの都合に沿った要求の仕方をしてくれません。 例えば「システムの処理速度をもっと速くしてほしい」とクライアントが要求したとしましょう。このときエンジニアは『処理速度を速くするためにはどのような設計にすべきか』を論理的に考え、アウトプットしなければなりません。
問題が発生した場合の方向修正にもスケジュールの調整にも、ロジカルに物事を考えるスキルが求められます。SEのスキルマップには必須の項目といえるでしょう。
プログラミングスキル
プログラミングスキルもSEのスキルマップに含めたい項目です。システム開発では設計書に基づき、プログラミング言語を使って構築を行います。
下流工程を担当しないSEであっても、エンジニア業務の基礎となるプログラミングスキルは欠かせません。扱えるプログラミング言語の種類・開発経験はもちろん、習熟度についても考慮しましょう。
同じプログラミング言語を習得している中で、基本的なコーディングのみが可能・フレームワークを駆使してゼロからシステムを開発できるといったように、習熟度を分けて数値化します。 案件の難易度によってアサインするSEを決められるだけでなく、あるプロジェクトに向けて育成したい人員の洗い出しも可能です。
マネジメントスキル
開発全体で必要な作業を明確化し、どの作業を何日までに終わらせるか計画を立てて遂行するマネジメント能力も、エンジニアには不可欠です。
人事部として検討したいのが、マネジメントスキルの範囲があくまでSE本人に限ったものなのか・チーム単位なのか・プロジェクト全体なのかという点です。 自身の管理だけなら難しくはありませんが、依頼する人と頼む内容・全体の進捗を管理して適切にフォローするマネジメントスキルを持つSEは希少です。 管理・調整できる範囲は、スキルマップを作る目的によって判断しましょう。
1人でプログラミングまで行う規模の小さいプロジェクトなら、自身をマネジメントできれば問題ありません。大規模なプロジェクトの管理を任せるSEのスキルマップには、複数人のマネジメントが能力を項目に取り入れます。
コミュニケーション能力
SEがクライアントと関わるのは、要件定義のヒアリングだけではありません。開発を進めている段階でも要望を聞き、適切に反映する必要があります。
ただクライアントがシステム開発に関して素人だった場合、改善の要望を完全に言語化してもらえる可能性は低いでしょう。失礼のない振る舞いは大前提として、顧客の意図をくみ取るコミュニケーション能力が求められます。 プロジェクトメンバー同士の連携にも、コミュニケーションスキルは欠かせません。
プログラマーへの指示出しをはじめ、さまざまな場面で聞き取りや提案の能力が必要です。 スキルマップにはコミュニケーション能力を測る項目も取り入れ、評価できるように数値化しておきましょう。
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SEの人事を助けるスキルマップの作り方
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SEのスキルマップを作るには、どのような手順で進めればよいのでしょうか。フォーマットに使うツール・項目や評価段階の設定と、順を追って作成方法を見ていきましょう。
表計算ソフトでフォーマットを作る
スキルマップのフォーマット作成に適しているのは、ExcelやGoogle スプレッドシートといった表計算ソフトです。
特にスプレッドシートは複数人が同時にシートを編集できたり、Googleアカウントがあれば簡単に始められたりと利便性の高さに強みがあります。 一方、Excelの利点は関数の使いやすさです。スキルシートに記載した点数を合計したり、特定の項目だけを抽出したりするときは関数を活用します、
Excelには豊富な関数ガイドがあるため、複雑な関数に慣れていなくても作成しやすいでしょう。 一から作成する時間がない場合は、厚生労働省が配布しているテンプレートを活用すると便利です。細かい項目は変わってくるとしても、ベースを作る参考になります。
キャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルのダウンロード|厚生労働省
スキルの評価項目と評価の段階を決める
スキルマップの評価項目は、SEの担当するポジションによって場合分けしましょう。上流工程がメインのエンジニアと下流工程を主に担当するエンジニアでは、求められるスキルが変わってくるためです。
評価項目で紹介した要素を軸に、プロジェクトの遂行に必要な項目をできるだけ細かく決定します。項目が決まったらそれぞれに対して、評価の段階を設定しましょう。 評価段階はアルファベットより数字の方が便利です。アルファベットを使うと合計値を出したり、平均をもとに評価基準を見直したりする作業が困難になります。
ただ『優』『良』『可』『不可』のようにシンプルな評価でよい項目に限っては、アルファベットや記号でも問題はありません。 数字による評価を採用する項目では、『Javaの開発経験が○年以上』『○○の知識がある』など具体的な指標を決める必要があります。
対象者名と項目ごとの評価を入力する
評価項目と評価段階が決まったら、スキルマップのフォーマットに入力していきます。SE一人ひとりの名前を縦に、項目を横に並べるのが基本です。
注意したいポイントが『明確な評価基準を持ち評価者の間で共有する』という取り組みです。入力する管理者によって基準の認識が違っていては、スキルマップに本当のスキルが反映されません。
スキルマップは自社に必要な技能と、社員の持つスキルを照らし合わせるために作るものです。入力を行う担当者によって評価の結果が変わらないよう、数値化した基準を共有しておきましょう。
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SEのスキルマップを作るポイント
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スキルマップを作成しても形だけになってしまっては、SEの育成や採用に生かせません。スキルマップを機能させるには、どのような工夫が必要なのでしょうか。
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複数人で客観的に評価する
スキルマップの評価は特定の上司やメンターに任せるのではなく、複数人で行いましょう。客観性が高まり評価の精度が上がります。
日常的に関わりのない立場からも評価をもらうと、本人の新たな気付きにつながるのもメリットです。 精密なスキル把握が必要になるSEのスキルマップは、多くの視点を取り入れて精度を上げなければなりません。
またSE自己評価のみで客観的なスキルマップは作れませんが、作成の過程で本人にも評価させるのは有効です。他の人から見て未熟な部分に本人が気付いていなかったり、逆にできているポイントを過小評価していたりという問題に気付けます。
客観性が高いスキルマップの活用シーンを広げ、育成に役立てましょう。
スキルに変化があれば更新する
SEをはじめITエンジニアやプログラマーは、日々新しい知識や技術を習得しながら業務にあたっています。半年前に作ったスキルマップと、現在の技能が全く異なっているケースもあるでしょう。
スキルマップを育成や人事の方向性決定に生かしたいなら、定期的な更新は欠かせません。特に資格を取ったタイミングやプロジェクトが完了した後は、スキルが変化している可能性が高い時期です。 本人が気付いていないスキルの変化を、周囲が気付くケースも少なくありません。複数人で評価する体制ができていれば、変わったポイントがあるかどうかも確認しやすいはずです。
成長した項目だけでなく以前と比べて衰えたスキルにも注目して、リアルタイムで能力を把握できるスキルマップを目指しましょう。
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タレントマネジメントの導入方法。優秀な人材の管理と育成を目指す
足りないSEのスキルを育成するには
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スキルマップによってSEの課題や問題点が発覚した場合、どのように解消すればよいのでしょうか。育成のポイントを押さえておくと、プロジェクトに必要な人員の確保に役立つでしょう。
資格の取得をサポートする
資格取得を目指して勉強させるのは、SEのスキルアップに効果的です。
未経験からのスキルアップにおすすめの『基本情報技術者試験』やサーバーに関わる業務に役立つ『Linux技術者認定資格』など、システム開発に関連する資格は多くあります。
会社としては資格勉強をするための環境を提供する、試験や勉強にかかる費用をサポートするといった施策を検討しましょう。資格を持ったエンジニアが多数所属していると、顧客に対しても信頼度の高さをアピールできます。
外部研修を活用する
スキルマップを更新しながらSEの研修をしても、思うような成長が見られないケースもあります。
特に経験の浅いエンジニアを育てている場合は、社内のSEを一定のレベルにそろえるのが難しいでしょう。 研修のノウハウやリソースが足りないと感じるなら、エンジニア研修に特化した外部サービスの活用も選択肢です。
ジョブサポートではSEのレベルに合わせて、個別指導で開発スキルを習得させられるコースを用意しています。作成したスキルマップをもとに課題を洗い出しておけば、より効果を感じられるでしょう。
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オンボーディングの重要性。手厚いサポートにより解決できる課題とは
スキルマップでSEの人事を成功させよう
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スキルマップは社内で必要とされる技術や能力と、働く人のスキルを照らし合わせるために作成する表です。
スキルの適合度合いがプロジェクトの成否を分けるSEには、スキルの把握が欠かせません。 SEを配置・育成・採用する立場の人事には、スキルマップの作成が社内のSEのレベルを把握するのに有用です。足りない技能も目で見て分かるため、育成・採用の方向性決定や配属に役立ちます。
複数人で評価する・定期的に更新するといったポイントを意識しつつ、明確な評価基準でジャッジできるスキルマップを作成しましょう。不足している部分に絞って強化するめども立ち、教育の効率化を実現できるはずです。