目標管理制度(MBO)とは?効果的な運用法や導入メリットを解説
目次[非表示]
- 1.目標管理制度(MBO)とは?
- 1.1.目標管理型の人事制度
- 1.2.OKRとの違い
- 2.目標管理制度(MBO)導入増加の背景
- 2.1.成果主義の普及
- 3.目標管理制度(MBO)導入のメリット
- 3.1.従業員のモチベーションを向上させる
- 3.2.従業員の能力を引き出して育成できる
- 3.3.評価基準が明確化される
- 4.目標管理制度(MBO)を正しく運用するポイント
- 4.1.社員本人に目標を設定させる
- 4.1.1.目標の高さを適切に
- 4.2.情意評価を取り入れる
- 4.3.客観的な評価基準の設定
- 5.目標管理制度(MBO)導入のステップ
- 5.1.組織目標と個人目標の設定
- 5.2.計画を立てて実行する
- 5.3.定期的に進捗を確認する
- 5.4.評価とフィードバック
- 6.公平な評価により社員の能力を引き出す
目標管理を正しく行うことで、社内競争や能力開発を活性化させられます。人材を育て、社内に良い雰囲気を作り持続的な成長を促すことも可能です。目標管理制度(MBO)の効果的な導入法や目的、評価方法について詳しく解説します。
目標管理制度(MBO)とは?
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目標管理制度(MBO)とはどのような制度のことを意味するのでしょうか。概要やOKRとの違いを解説します。
目標管理型の人事制度
MBO(Management By Objectives)とは、企業の目標に沿って従業員に目標を決めてもらい、達成度合いを従業員の評価基準とする人事制度です。従来の人事評価制度とは違う新しい制度として注目されています。
MBOのポイントは、従業員の目標を従業員自身に決めさせることです。企業が押し付けるのではなく、従業員本人に設定させることで、さまざまな効果を期待できます。 ただし、従業員の目標は、企業の経営戦略とリンクしていなければなりません。個人の成長を促すと同時に企業の底上げを図ることも、MBOの大きな狙いです。
OKRとの違い
MBOと似た意味の言葉にOKR(Objectives and Key Results)があります。従業員に目標を設定してもらい、達成度合いを評価基準にする点は、OKRもMBOと同じです。
ただし、MBOが100%の目標達成を求めるのに対し、OKRは100%でなくても構いません。OKRは目標達成と報酬制度を結び付けていないため、厳しい数値管理が行われないのです。
目標の振り返りまでの期間が短い点もOKRの特徴です。MBOは基本的に評価スパンを1年としますが、OKRは早ければ1カ月後に軌道修正や目標再設定を行います。 OKRはMBOより目標の共有範囲が広めです。
MBOが目標を上司と共有する程度であるのに対し、OKRは目標を全社的に共有します。組織への帰属意識を強めるのが狙いです。
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目標管理制度(MBO)導入増加の背景
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多くの企業で目標管理制度(MBO)の導入が進んでいる背景を紹介します。成果主義の普及が原因の一つであることを押さえておきましょう。
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成果主義の普及
日本は1973年のオイルショック以降、『職能資格制度』と呼ばれる人事制度が広く普及しました。職能資格制度とは、企業が従業員に求める業務遂行スキルを評価基準とし、昇級・昇進を決める制度です。
職能資格制度にはそれなりのメリットもあるものの、年功序列に陥りやすく人件費も高くなりやすいという欠点があります。能力評価が難しいことも欠点の一つです。
もともと欧米に広く普及していた成果主義の普及も相まって、職能資格制度に代わる人事制度として、1990年代に入り目標管理制度(MBO)が多くの企業で導入され始めたのです。
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目標管理制度(MBO)導入のメリット
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自社の評価システムにMBOを導入するメリットを紹介します。企業と従業員のどちらも恩恵を受けられることが特徴です。
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従業員のモチベーションを向上させる
MBOで従業員が設定する目標は、企業の目標ともリンクしています。個人目標が達成されれば企業に貢献したことになるため、経営者や上司から称賛を得られるでしょう。 企業から貢献を認めてもらうことで、従業員のモチベーションが向上しやすくなります。
やる気が出れば業務も効率化し、企業の業績アップにつながります。 従業員の『役に立ちたい』『認められたい』という気持ちを満たせる点は、MBOの大きな特徴です。適正な目標設定を行うことで、企業への貢献度をより高めることも可能です。
従業員の能力を引き出して育成できる
従業員が持つ能力を最大限に引き出せることもMBOのメリットです。従業員の能力より少し高めの目標にすれば、従業員自身が工夫を凝らして努力するため、能力を伸ばしやすくなります。
MBOでは、基本的に目標を達成しなければ報酬アップを望めません。6~7割の達成度合いで上司に努力を評価されたとしても、最終的な人事評価にはつながらないのです。
そのため、従業員は自己統制や創意工夫をしながら、目標達成に向けて精励するようになり、結果的にスキルが磨かれ、従業員のさらなる成長を期待できます。
評価基準が明確化される
MBOでは従業員の評価基準が明確されます。透明性のある評価基準を示すことで、従業員全員に納得感が生まれるため、他人の評価を気にせず自分の目標達成のみに集中してもらえます。 評価基準が明確になれば、人事部にとっても評価業務の負担を軽減できるでしょう。従業員の人事評価を適切かつ公平に行うことが可能です。
MBOはあくまでも組織と個人の目標をすり合わせるための手段であり、人事評価に使うべきではないという意見もあります。ただし、目標達成度合いを評価基準にすることはさまざまなメリットがあるため、多くの企業で評価と報酬を結び付けているのが実情です。
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目標管理制度(MBO)を正しく運用するポイント
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MBOを取り入れる場合は、運用にあたり次に挙げるポイントを意識しましょう。思ったほどの効果が得られないというリスクを軽減できます。
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社員本人に目標を設定させる
MBOでは、社員に自主性を意識させることが重要です。目標を設定する際も、社員自らが目標を決める必要があります。
会社側で目標を設定してしまうと、企業に目標達成を強制された形となり、自主性が生まれにくくなるでしょう。企業の目標とリンクさせながら、あくまでも社員本人が目標を設定しなければなりません。 自分で目標を設定してもらえば、組織に貢献することや自分が成長することに対する意識が芽生えやすくなります。モチベーションアップにもつながるでしょう。
目標の高さを適切に
MBOで従業員が目標を達成すれば報酬アップに直結するため、目標のレベルを低く設定しようとする従業員もいるでしょう。しかし、目標のレベルが低過ぎると従業員の成長にはつながりません。 レベルが高過ぎる目標にも注意が必要です。やる気のある社員が目標のレベルを高く設定してしまい、努力しても一向に達成できない状況が続くと、やる気を失いかねません。 適正レベルの目標を設定してもらうためには、社員ごとの適性やスキルを細かく把握し、目標設定に反映することが大切です。少し頑張ればクリアできる程度のレベルで目標を設定しましょう。
情意評価を取り入れる
MBOでは、従業員が目標達成を意識し過ぎるあまり、目標に関係のない業務をやらなくなる可能性があります。しかし、目標以外にもやってもらわなければならないことは数多くあるでしょう。 目標達成に力を入れ過ぎるのを防ぐためには、情意評価を取り入れる方法が効果的です。
情意評価とは、仕事に対する態度や意欲を評価することを意味します。 情意評価を取り入れることにより、目標達成以外の部分も評価対象になるため、従業員が目標から外れた業務をしないという状況をある程度回避できます。
客観的な評価基準の設定
従業員の評価基準を設定する際は、客観的かつ納得できる基準にする必要があります。誰が見ても分かりやすく、不公平感のない基準を設定しましょう。
MBOで評価基準を決める際は、努力の量を加味しないことが重要です。従業員ごとに自分が感じる努力の度合いは異なる上、外からは定量化しにくい要素であるため、客観性に欠ける基準になりやすいためです。
適正評価ができなければ、従業員のモチベーションを下げてしまいかねません。管理者の評価スキルが低いと感じるなら、人事評価スキルを習得できるような研修の実施も検討してみましょう。
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目標管理制度(MBO)導入のステップ
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MBOはどのようなステップを踏んで導入すれば良いのでしょうか。一般的に行われている大まかな流れや、ステップごとに意識すべきポイントを紹介します。
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組織目標と個人目標の設定
MBOに取り組む際は、最初に目標を設定します。土台となる組織やチームの目標を設定し、それらと整合性が取れた従業員ごとの目標を設定しましょう。
個人目標は1カ月に1個程度の数を設定します。半期での振り返りなら5~6個、1年区切りにするなら10~12個を設定すると良いでしょう。
目標を設定したら、それぞれに重要度を設定し、重要度の高い目標を優先して業務に取り組みます。数値目標だけでなく、具体的なアクションベースにすれば、評価する際の基準がより明確になるでしょう。
計画を立てて実行する
個人目標が定まったら具体的な計画を立てましょう。目標のレベルチェックや具体的な計画の立案は、上司のサポートを得ながら進めていくのがポイントです。 目標達成までのプロセス管理は、『PDCAサイクル』を活用しましょう。
PDCAサイクルとは、計画・実行・評価・改善の4フェーズを回しながら、管理業務をうまく進めていくための手法です。 PDCAサイクルを効率良く回すためのポイントは、細かく分析することとスピードを意識することです。PDCAサイクルに役立つシステムやツールを導入すれば、より効果的に目標達成までのプロセスを管理できるでしょう。
定期的に進捗を確認する
MBOを効果的に進めていくためには、定期的な進捗確認も大切です。週1回や月1回などのペースで、上司と従業員の1on1ミーティングを実施し、上司が進捗を確認します。
1on1ミーティングでは、従業員に自分の行動の振り返りを行ってもらい、修正が必要か自主的に考えさせることが重要です。上司が一方的に助言してしまうと、従業員の成長を妨げることになります。
MBOにおける定期的な1on1ミーティングにより、従業員の課題解決能力を高めることも可能です。従業員に主体性を発揮させ、自分の中で答えを見つける力を養ってもらいましょう。
評価とフィードバック
設定した期間の期末に行うのが評価とフィードバックです。最初に自己評価を行い、評価基準に従って上司から評定を受けます。 フィードバックを行う際は、目標を達成できなかった理由や次に取るべき行動を、1on1ミーティングで従業員に考えてもらいましょう。
1on1ミーティングで従業員の本音を引き出せなければ、効果的なミーティングはできません。MBOを正しく機能させるためには、管理者層にマネジャー向けの研修を受けてもらうのも一つの方法です。
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目標管理制度(MBO)とは、目標管理型の人事評価制度です。従業員のモチベーションを向上させられることや、従業員の能力を引き出せることなどのメリットがあります。 評価基準が明確になるため、公平な評価を行える点も特徴です。社員や企業をより成長させるために、MBOの導入を検討してみましょう。