エンジニアの採用が難しい理由とは。企業が取るべき対策を解説
近年は売り手市場の状況を受け、エンジニアの採用に苦戦する企業が増えています。今後も広い業界でIT化が進むと予想されるため、優秀な人材の確保は喫緊の課題となるでしょう。採用が難航する理由と、人材確保に向けて企業が取るべき対策を解説します。
目次[非表示]
- 1.エンジニアの需要は年々高まっている
- 1.1.多様な業界で進むIT化
- 1.2.エンジニアの母数不足
- 2.優秀なエンジニアの採用が難しい理由
- 2.1.売り手市場で高待遇が必要
- 2.2.エンジニアのスキルを見極めるのが困難
- 2.3.エンジニアの働き方が多様化
- 3.エンジニアの採用で苦戦する企業の特徴
- 3.1.給与や待遇が相場よりも低い
- 3.2.新しい採用手法を取り入れていない
- 3.3.エンジニアへの理解が不足している
- 4.エンジニア採用に向けて企業ができる工夫
- 4.1.必要なスキルや経験を整理する
- 4.2.社内エンジニアの力を借りる
- 4.3.給与体系や働き方を見直す
- 5.エンジニアの応募を増やす施策
- 5.1.採用ミートアップの開催
- 5.2.複数の媒体での情報発信
- 6.エンジニアの離職防止も重要
- 6.1.エンジニアが離職してしまう原因
- 6.2.離職を防止する必要性
- 6.3.定着に効果的な施策
- 7.エンジニアの採用体制や待遇の見直しを
エンジニアの需要は年々高まっている
エンジニアをはじめとするIT人材は年々活躍の幅を広げており、将来も安定して需要があると予想されています。優秀なエンジニアを採用するためにも、エンジニアを取り巻く現状と今後の方向性を把握しておきましょう。
多様な業界で進むIT化
各業界のIT化に伴い、IT業界の市場規模は拡大傾向にあります。
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の拡大は、IT業界にも影響を及ぼしています。人との接触が制限されたことでIT化が進まなかった業界でもITの導入が検討され、重要度が向上する結果となりました。
少子高齢化による労働力不足が懸念される中、近年はAIやIoTなどの最新IT技術によって、労働・サービスにおける問題を解決する試みもスタートしています。 AIやIoT、ビッグデータの活用などが社会に浸透するにつれ、それらに携われるIT人材の需要が拡大しているのが現状です。
エンジニアの母数不足
経済産業省が公表する「IT人材需給に関する調査」によると、日本におけるIT人材の供給は、需要に追い付いていない状況です。
IT人材の需要の伸びが年平均2.7%、労働生産性が年0.7%で上昇した場合、IT人材の不足数(需要ギャップ)は2025年には約36万人、30年には約45万人に上ります。仮に需要の伸びが年平均3~9%で推移すれば、30年には最大79万人のIT人材が不足するでしょう。
経済産業省では、IoTおよびAIのサービスに従事する人材を「先端IT人材」、それ以外を「従来型IT人材」として区別しています。今後はIT業界の構造が従来型ITから先端ITへ変化するため、人材に求められるスキルも大きく変わります。 先端ITへのスキル転換がうまくいかなければ、将来は「先端IT人材は不足し、従来型IT人材は余る」という需要構造が生まれるかもしれません。
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優秀なエンジニアの採用が難しい理由
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多くの企業から「優秀なエンジニアの採用が難しい」という声が上がっているようです。自社が求める人材をタイムリーに確保するためにも、採用が難航する理由を明らかにしておく必要があります。
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売り手市場で高待遇が必要
IT業界の進展とIT人材の不足が続く限り、エンジニアは売り手市場です。
金融・医療・物流・農業と今後はさまざまな分野でIT化が進むため、先端技術の運用ができるIT人材はどの業界でも重宝されるでしょう。 企業間での人材獲得競争が激化する中、優秀なエンジニアを勝ち取るにはそれなりの高待遇を提示しなければなりません。
現在は、より多くの給与を支払える大企業が優秀な人材を囲い込む状況が続いており、中小企業では採用が難航するケースが多いようです。 中小企業が優秀な人材を確保するには、大手企業並みの高待遇を目指すか、待遇面以外の魅力をアピールする必要があるでしょう。
エンジニアのスキルを見極めるのが困難
エンジニアは数ある職種の中でも専門性が高く、採用する側にプログラミング言語への理解や現場での経験がないと、人材を見極めるのが困難です。 人事担当者がエンジニアのスキルを見極められなければ、採用のミスマッチが生じます。
優秀な人材を確保できないばかりか、自社に適合しない人材を採用するケースも珍しくありません。 ITスキルのトレンドは移り変わりが早いため、過去の実績だけで判断すると、採用後に「スキルが追い付いていない」「業務が遂行できない」という事態を招きます。 人事担当者は現場担当者と事前に擦り合わせを行い、現場が求める人材要件を明確にすることが肝要です。
エンジニアの働き方が多様化
働き方が多様化したことも、優秀なエンジニアが確保しにくい理由の一つです。
近年は、フレックスタイム制度やリモートワーク、副業制度などを導入する企業が増え、柔軟な働き方を許容する風潮が社会に広がっています。 IT業界では、企業に属さず個人で業務を請け負う「フリーランスエンジニア」が増加しています。「エンジニアの育成にかかるコストを抑えたい」「即戦力が欲しい」という理由から、フリーランスを求める企業が増えているのです。
優秀なエンジニアには多くの企業から仕事の依頼が舞い込むため、企業に所属しなくても十分な収入を得られます。そのため、スキルの高いエンジニアは転職市場になかなか姿を見せない状況になってきました。
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エンジニアの採用で苦戦する企業の特徴
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エンジニアの採用で苦戦する企業には、いくつかの共通項があります。エンジニアの絶対数が少ないのに加え、エンジニアが求める待遇や労働環境を企業側が提供できないところに問題があるようです。
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給与や待遇が相場よりも低い
エンジニアに限らず、転職活動では給与や福利厚生といった「待遇のよさ」を重視する人が大半です。加えてIT業界は売り手市場なので、給与や待遇が相場よりも低い企業にはなかなか人が集まりません。
経営者や人事担当者は、他社が提示しているエンジニアの給与・待遇を分析し、雇用条件の見直しを図る必要があります。 経営難で大幅な賃上げが難しいケースもありますが、エンジニアが求める条件と企業の求める条件とができるだけ乖離しないようにしましょう。
新しい採用手法を取り入れていない
以前はハローワークや求人サイト、人材紹介会社が企業の主な採用手法でした。しかし、近年は新たな採用手法を使って、優秀な人材をいち早く確保しようとする企業が増えています。
人材獲得の競争が激しさを増す中、従来の採用方法だけに頼っていては他社に後れを取ってしまいます。ポイントは「待ちの採用」ではなく、積極的にアプローチしていく「攻めの採用」を取り入れることです。 企業から求職者に直接アプローチをする「ダイレクト・リクルーティング」や、社員から友人・知人を推薦してもらう「リファラル採用」は、攻めの採用手法の代表格です。
デジタルネイティブと呼ばれる若い世代をターゲットとするなら、SNSを活用した「ソーシャル・リクルーティング」も有効でしょう。
エンジニアへの理解が不足している
採用する企業側がエンジニアのワークスタイルや価値観を理解していないと、「この企業で働きたい」と思ってもらうのは難しくなります。 エンジニアの働き方は多様化しており、希望する働き方やキャリアに対する価値観は十人十色です。
「正社員での採用を希望しているはず」といった勝手な決めつけをして採用活動を進めても、思うような効果は見込めません。 給与や待遇以外で優秀な人材を引き付けるには、彼らの価値観を理解した上で、多様な働き方を認める必要があります。
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エンジニア採用に向けて企業ができる工夫
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優秀なエンジニアを採用するために、企業はどのような工夫をすればよいのでしょうか?企業によっては、採用プロセスや給与体系、雇用形態などを根本的に見直す必要があるでしょう。
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必要なスキルや経験を整理する
エンジニアの採用に苦戦したり採用のミスマッチが起こっていたりする企業では、人事担当者が「現場が求める人物像」を把握していないケースが多くあります。
人事担当者は採用活動に当たって、IT業界やエンジニアに関する最低限の知識を身に付けておかなければなりません。採用基準やターゲット像を定める際は、現場の責任者とも擦り合わせを行い、認識のずれが生じないようにする必要があります。
MUST条件が多ければ採用活動に苦戦し、逆に条件を甘くすれば採用後の育成に時間や労力がかかります。採用基準に関しては「妥協できる点」と「妥協できない点」を明確にしておきましょう。
社内エンジニアの力を借りる
エンジニアの採用には、現場で活躍できる人材かどうかを見極めることが必須です。人事部だけで採用を進めずに、社内のエンジニアにも協力を求めましょう。
単に仕事で必要なスキルや資格を確認するだけでなく、「どのような業務に携わっていた人が候補に入るか」「どのような人と一緒に働きたいか」を具体的にヒアリングすることが大切です。 人事と現場社員が一丸となって進める採用手法は「スクラム採用」と呼ばれます。
専門的知識を持つプロ(社内エンジニア)が採用の各プロセスに関わることでミスマッチが減り、チームメンバーとしてふさわしい人物を採用できる可能性が高まります。
給与体系や働き方を見直す
給与体系や働き方を見直すことで、優秀なエンジニアが集まりやすくなります。給与・賞与を決める際は他社の求人を調査し、業界全体の相場から大きくかけ離れないようにしましょう。
エンジニアに限らず、「自分の能力が正当に評価されていない」「働きに見合った対価が受け取れていない」と感じると、多くの人は離職を考えます。 早期離職を防ぐためにも、社内のエンジニアの意見を取り入れながら「技術職独自の評価制度」を作ることも検討しましょう。
働き方に関しては、「フレックスタイム制」「裁量労働制」「リモートワーク」など、自分に合ったワークスタイルを選べるようにするのが理想です。
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エンジニアの応募を増やす施策
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採用を成功させる鍵は、すでに転職市場に出ているエンジニアだけでなく、「よい企業があれば転職したい」という潜在層に働きかけることです。積極的なアプローチで応募者を増やしていきましょう。
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採用ミートアップの開催
採用活動では「母集団の形成」が重要な役割を果たします。
母集団とは、自社の求人に興味・関心を持つ採用候補者の集団です。母集団の形成がしっかりできている企業ほど、自社にマッチした人材を効率的に探せます。 母集団を形成するには、できるだけ多くのエンジニアと接点を持つ必要があります。ミートアップを定期的に開催し、自社のファンを増やしましょう。
ミートアップとは、共通の目的を持った人々が集まる交流会やイベントの呼称です。 エンジニアに関連するセミナーや勉強会を定期的に開催すれば、成長意欲の高い優秀な人材に出会える可能性があります。転職の意欲はあってもまだ実際に活動していない「転職潜在層」にも、幅広くアプローチできるでしょう。
複数の媒体での情報発信
優秀な人材の獲得に成功している企業の多くは、採用広報に力を入れています。採用広報とは、企業のHP・社内ブログ・Instagram・Twitterなどの複数の媒体を使い、自社情報を広く発信することです。
企業理念や仕事内容だけでなく、職場の雰囲気や社員の働きぶり、現場の声などを公開すれば、「こんな会社で働いてみたい」という応募者が増える可能性があります。 採用チャンネルの多様化が進む昨今、応募者を待つだけでは欲しい人材に手が届きません。複数のツールを使って発信をすれば、転職を考えている人はもちろん、転職潜在層に対しても効果的なアプローチが可能です。
Webマガジンや求人情報誌などで、自社の取り組みやインタビューを取り上げてもらうのもよいでしょう。第三者による記事は読み手に客観的な事実を伝えます。
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エンジニアの離職防止も重要
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優秀なエンジニアは引く手あまたで、ほかによい勤め先があるとすぐに転職してしまう可能性があります。採用活動に力を入れるだけでなく、確保した貴重な人材を失わないように努めましょう。
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エンジニアが離職してしまう原因
エンジニアが離職を決める主な理由としては、以下のようなものが考えられます。
- スキルアップが見込めない
- 労働に見合った収入がもらえない
- 労働時間が長くなりやすい
- 人間関係への不満
多くのエンジニアは、「能力や労働に見合った収入が得られるか」や「スキルアップができるか」を重視しています。 優秀なエンジニアは転職で高収入・高待遇を目指せるため、描くキャリアを実現できない職場にとどまる必要はないといえるでしょう。
近年は働き方改革の推進によって、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」も重視されるようになりました。長時間労働が常態化している企業は、エンジニアに敬遠される傾向があるようです。 また、プロジェクトはチーム単位で行うことが多く、チームメンバーとの関係性が良好でないと仕事を続けるのは難しいという問題もあります。
離職を防止する必要性
企業の中には、採用活動ばかりに力を入れ、離職防止の対策を後回しにしているところも見受けられます。離職防止の対策を怠った場合、企業にはどんな影響が及ぶのでしょうか?
- 優秀な人材が流出する
- 採用・育成コストが無駄になる
- 既存社員へのしわ寄せが生じる
- 企業イメージが悪化する
社員が離職すると、採用や育成にかけたコストが無駄になります。育成に携わった先輩社員の労力も水の泡となり、離職者が出るたびに現場のモチベーションは低下するでしょう。 辞めた社員の穴埋めで既存社員の業務量が増大し、職場に不満が広がる恐れがあります。
また、離職率の高さは企業イメージにも悪影響を与えます。「ブラック企業」のイメージが付けば求職者が離れていき、人集めに苦労することになるでしょう。
定着に効果的な施策
労働環境の改善や給与体系の見直し、多様な働き方の導入など、社員の定着率を上げる方法は多様です。その中でもエンジニアの場合、スキルアップできる環境が優秀な人材の定着に欠かせません。
向上心のあるエンジニアは、スキルアップを重視する傾向にあります。新しい技術やスキルを学べる環境が用意されていないと、今後のキャリア形成に不安を抱き、離職してしまう可能性があるでしょう。 定着を図る施策として、手放したくない人材には成長につながるプロジェクトを任せるという選択が挙げられます。
能力向上や技術習得に向けた「外部研修」に参加させるのも一つの手です。
ジョブサポートでは、法人向けにエンジニアの育成研修を提供しています。他分野から転身する経験者だと基礎部分の研修が無駄になりがちですが、ジョブサポートの個別指導ならレベルに合った研修が可能です。
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エンジニアの採用体制や待遇の見直しを
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「優秀なエンジニアが集まらない」「採用してもすぐ辞める」と頭を悩ませている企業は、エンジニアの採用プロセスを見直す必要があります。現場のリーダーや社内のエンジニアを巻き込み、求める人物像をクリアにしましょう。
IT人材の供給が需要に追い付いていないこともあり、エンジニアの転職市場は売り手優勢の状況が続くと予想されます。給与・待遇の改善を行うとともに、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を取り入れる施策が必要です。