ロジカルシンキングのポイント。考え方の基本とフレームワークを解説
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- 1.ロジカルシンキングとは
- 1.1.「ロジカルに考える」の意味
- 1.2.エンジニアにロジカルシンキングは必要?
- 2.エンジニアがロジカルシンキングを磨くメリット
- 2.1.プロジェクトを早く進められるようになる
- 2.2.問題解決力が向上する
- 2.3.非エンジニアにも納得のいく説明ができる
- 3.ロジカルシンキングの代表的手法
- 4.汎用フレームワークも知っておこう
- 4.1.MECE
- 4.2.So What?/Why So?
- 4.3.ピラミッドストラクチャー
- 4.4.ロジックツリー
- 5.ロジカルに考えられる人材を育てるには?
- 5.1.グループワークやケーススタディを行う
- 5.2.外部の研修を利用する
- 6.ロジカルシンキングを取り入れよう
ロジカルシンキングはビジネスパーソンに必須とされており、エンジニアにも欠かせないスキルです。考え方の基本と、論理的な考えのベースとなるフレームワークを押さえておきましょう。ロジカルシンキングができる人材を育てるポイントも解説します。
ロジカルシンキングとは
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ロジカルシンキング(論理的思考)とは、物事の関係性を正確に捉え、筋道立てて理解するための思考法です。 自分とは知識や経験の異なる他者とコミュニケーション取るときに必要なスキルで、エンジニアをはじめビジネスパーソンには欠かせない能力の一つとされています。
「ロジカルに考える」の意味
「ロジカル(論理的)である」とは、特定のテーマに関する主張や話の内容に「結論」と「理由」があり、それらが矛盾なくつながっている状態です。
結論と理由が問題なくつながっていれば、相手が話の内容をすぐに理解できるだけでなく、説得にも応じてもらいやすくなります。 理由を説明せずに結論だけ伝えてしまう人は少なくありませんが、それでは相手に納得感を与えられず、場合によっては不満を持たれてしまうケースもあるでしょう。
また、話が長いにもかかわらず何を言っているのか分からない人や、相手に正確に意図を伝えられない人もいます。 その場合、結論を伝えるまでに無駄な話をしていたり、そもそも「何を伝えたいのか」が、自分の中で明確になっていなかったりする可能性があるでしょう。 ロジカルに話ができれば、周囲とスムーズにコミュニケーションが取れるのに加えて、交渉やプレゼンも得意になり、周囲からの評価も高まります。
エンジニアにロジカルシンキングは必要?
エンジニアの主な業務はシステムの開発や提案、ネットワークの管理など多様です。さまざまな場面で問題や課題を発見し、解決するための方法を考え出したりシステムの設計に落とし込んだりする必要があります。
さらに、クライアントに対して開発の提案やアドバイスをし、時には交渉を持ちかけなければいけません。 エンジニアが業務にあたるとき、ロジカルに考えられる人と考えられない人とでは、パフォーマンスに大きな差が出てしまうでしょう。
ロジカルに考えられる人は効率的に仕事をこなせ、クライアントに納得してもらえる話ができるようになります。 エンジニアを雇用している企業にとっては、社員のロジカルシンキングを磨く取り組みが重要です。組織全体の生産性が上がり、結果的に売上の向上を実現できるでしょう。
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エンジニアがロジカルシンキングを磨くメリット
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エンジニアがロジカルシンキングを身に付けると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?実際に業務で経験する場面で、実現できることを見ていきましょう。
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プロジェクトを早く進められるようになる
エンジニアがロジカルシンキングを磨けば、開発プロジェクトをスムーズに進められる可能性が高まります。 物事を客観的に把握でき分析力も向上するので、どのように業務を進めれば効率的か判断しながらプロジェクト全体のかじ取りが可能になるためです。
また、エンジニアの仕事には、絶えず考え続けなければならない場合が多くあります。ロジカルシンキングを鍛えると思考の速度が速くなり、結果的に開発作業のスピードも上がります。 エンジニア一人一人の思考速度が増せば、プロジェクト全体をスムーズに進められるのがメリットです。
問題解決力が向上する
ロジカルシンキングを身に付ければ、さまざまな事柄の「本質」が何か判断できるようになるため、問題解決力が向上します。 「本質」とは問題の根の部分です。本質が何かを把握できなければ、問題を解決できる施策を打ち出せません。
例えば、システムの設計に遅れが出ており、周囲のエンジニアは開発スパンの短さが原因だと考えていたケースを考えましょう。 しかしロジカルに考えると、実はクライアントに送った資料の内容が不足していて、スムーズなレスポンスを得られていなかったのが原因と分かることがあります。
この場合、本質的な解決策は「開発スパンを長くする」ではなく、「資料の改善」です。開発期間を延ばせば一時的な解決にはなりますが、今後も同じような資料を送っていればまた遅れが出る可能性があります。
ロジカルシンキングで問題の本質を見抜けるようになると、ロスが少なくより効果の高い解決案を打ち出せるのです。
非エンジニアにも納得のいく説明ができる
ロジカルシンキングを身に付ければ、エンジニア以外の職種の人に対しても、納得感のある説明が可能になります。 自分とは違う価値観やバックグラウンドを持っている人、畑違いの仕事をしている人に対しても、「論理」を通じてスムーズにコミュニケーションを取れるようになるでしょう。
また、クライアントをはじめとした利害関係者に対しても、説得力のある話ができるようになります。自身の主張を通しやすくなり、意見を聞き入れてもらえるのもメリットです。 エンジニアは専門家としてプレゼンする機会も多いため、クライアントに説得力のある話をするために論理力を身に付ける必要があるでしょう。
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ロジカルシンキングの代表的手法
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ロジカルシンキングには、大きく分けて二つの手法があります。「演繹法」「帰納法」それぞれの意味と具体例をチェックして、自分の会話や人材育成に生かしましょう。
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演繹法
演繹法(えんえきほう)とは、あらかじめ決められている前提や一般論に対して、目の前の事実・事象を当てはめて結論を出す方法です。
ビジネスの例を挙げると、次のような考え方が演繹法に当てはまります。
- 一般論:ライバルが同じような商品を開発すると、売上が落ちる
- 事象:自社のライバルA社が類似サービスを開発した
- 結論:自社サービスの売上が落ちるかもしれない
前提となる一般論が間違っていなければ、事象を関連付けて出した結論は誰でも納得のいくものです。また、前提も事象も基本的に一つなので、スピーディーに結論が出せます。
帰納法
帰納法とは、複数の事実や実例から共通点を導き出す方法です。
例えば、日本やアメリカ・ヨーロッパ諸国など、各国の経済状況を調べて軒並み「景気が悪い」という事実が分かれば、世界的に不景気だと分かるでしょう。 一つ一つの事実を調べた上で結論を出す必要があるので、時間や手間はかかる思考法です。
しかし、演繹法と違って、これまで発見されていなかった法則や傾向が判明する可能性もあります。 ビジネスで有効な施策を打ち出す際にも、個別の事実を調べて共通点を見出すアプローチができるでしょう。
ただし、参考にする事実やデータに偏りがある場合、実態とは異なる結論を出してしまうリスクがあります。できるだけ多くの事例を調べて、論理の偏りや飛躍が起こらないように配慮することが大事です。
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汎用フレームワークも知っておこう
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ロジカルシンキングの基本的な手法は演繹法と帰納法ですが、これらをベースにした汎用的なフレームワークも知っておきましょう。フレームワークを使わなくてもロジカルシンキングはできますが、思考の取っ掛かりとして役立ちます。
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MECE
MECE(ミッシーあるいはミーシー)とは、「漏れやダブりのない状態」を指す概念です。ロジカルシンキングの基本であり、情報収集や選択肢を検討する際に判断の基準にできます。
例えば、日本人全体の読書量の平均を導き出したい場合、若年層と中年層のみの調査では不十分なことが分かるはずです。 老年層(高齢者層)の読書量も調べなければ、全体の平均を出すことはできません。調査対象が不十分な状態で結論を出しても、それはロジカルな帰結とはいえないでしょう。
調査に漏れやダブりがある状態では、的外れな結論を出してしまう可能性があります。納得感を得られる結論を出すためにも、主張の根拠となる事柄の網羅性を意識することが大事です。
So What?/Why So?
ロジカルシンキングでは、「So What?(つまり、どういうことか?)」と「Why So?(なぜ、そういえるのか?)」を追求する必要があります。 主張に明確な結論と理由(根拠)があり、それらが矛盾なくつながっていなければロジカルとはいえません。
論理性を担保するためには、「So What?」という質問によって、主張の根拠となる事実や事象が何を意味するのかを明確にしましょう。さらに「Why So?」によって最終的な結論や、主張の根拠を示せるようにしておくことが重要です。
ロジックを組み立てる際には、自らの思考に対して質問を繰り返し、主張に筋が通っているかをしっかりとチェックしましょう。フレームワークというよりは、しっかりしたロジックを構築するための意識といえます。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーとは、一番上に最も伝えたい主張(結論)を据え、その下に根拠を並べた構造を提示するフレームワークです。論理の基本構造とされています。
ピラミッドの縦方向では結論を頂点とする「So What?/Why So?」の関係が成り立ち、横方向に並んだ複数の根拠(要素)はMECEによって漏れやダブりを回避するのが特徴です。 ビジネス上のリサーチをする場合や、説得力のあるプレゼンをしたい場合には、ピラミッド構造で考えをまとめてみましょう。エンジニアがクライアントや上司にプレゼンする際も、整理された論理で納得させられる提案ができるはずです。
ロジックツリー
ロジックツリーは、問題や課題を定義し、その原因や要素をツリー状に分解していくフレームワークです。問題を引き起こしている原因を明らかにしたり解決策を洗い出したりするのに有効で、自分の考えを整理するためにも使えます。
ピラミッドストラクチャーと似ていますが、ロジックツリーは物事を分かりやすくするために、問題や課題を複数の要素に分解するのが特徴です。 一方、ピラミッドストラクチャーは、特定の主張をするためのロジックを構築するアプローチといえるでしょう。
両者は用途が異なるものの、いずれもMECEをベースにしている点は共通しています。ロジックツリーでも、分解した要素に漏れやダブりがないかチェックしましょう。
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ロジカルに考えられる人材を育てるには?
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ロジカルシンキングはフレームワークの活用によって、もともと苦手な人でも後天的に可能になります。自社のエンジニアにロジカルな思考を身に付けさせたい場合、どのようなアプローチができるのでしょうか?
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グループワークやケーススタディを行う
個人でもロジカルシンキングを習得できますが、企業として学ぶ場を設けるとより効果的です。社内で定期的にグループワークやケーススタディを行い、日常的に論理思考を実践する機会を与えましょう。
エンジニアの場合は、業務で実際に直面するような問題に関して、ロジカルに解決策を導き出すケーススタディをしてみましょう。ケーススタディを繰り返すことで、日常的にロジカルシンキングができる人材を育成できます。 複数人で学習を進めれば、互いに論理の飛躍や思考の「抜け」や「漏れ」を指摘し合えるので、より効率的に思考力を高められるはずです。マネジメント層や人事部門が中心となって、ロジカルシンキングの勉強会を開催するのもよいでしょう。
外部の研修を利用する
社員のロジカルシンキングを育てるには、外部の研修を活用するのもおすすめです。近年は、さまざまな企業や団体がロジカルシンキングに関する講座や研修を開催しています。ITエンジニア向けの研修も多いので、積極的に活用しましょう。
ジョブサポートでは、問題解決に強いエンジニアを育てるための研修を提供しています。個別指導にも対応しており、新人からベテランのエンジニアまで幅広い人材の育成が可能です。
■関連サイト
ロジカルシンキングを取り入れよう
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ロジカルシンキングは、物事を体系的に筋道立てて考える思考法です。ビジネスでは必須とされて久しいスキルであり、非常に汎用性が高いことが分かります。 論理の基本は演繹法と帰納法です。これを基本としつつ、多くのフレームワークが作り出されてきました。
ピラミッドストラクチャーはその代表例であり、さまざまな場面で役に立ちます。使いこなせる人材を育てることで、企業の利益につながるでしょう。 ロジカルシンキングを身に付けるには、実践的な問題を設定し解決するケーススタディやグループワークがおすすめです。状況に応じて外部の研修も活用しながら、ロジカルに考えられるエンジニアを育てましょう。