コミュニケーションスキルとは。円滑な人間関係を築くテクニック例
コミュニケーションスキルは、仕事を円滑に進めていくために欠かせない能力です。エンジニア職だけでなく全ての職種の人材採用・育成において多くの企業で重要視されています。豊かな人間関係を構築し、ビジネスを良い方向へ導くためのテクニックを紹介します。
目次[非表示]
- 1.仕事は人と人との通じ合いで成り立つ
- 1.1.コミュニケーションスキルの要素
- 1.2.コミュニケーションスキルの重要性
- 2.コミュニケーションの種類とスキルアップ法
- 3.相手と上手に付き合うためのポイント
- 3.1.キャリブレーションで察する
- 3.2.アンガーマネジメントで穏やかに
- 4.伝え上手になる方法
- 4.1.PREP法、SDS法の活用
- 4.2.DESC話法を取り入れる
- 4.3.ゲームを通したスキルアップ
- 5.聴き上手になる方法
- 5.1.3段階で傾聴力を向上させる
- 5.2.要約力で論点を整理する
- 5.3.相手を中心とした話し方で心をつかむ
- 5.4.毎日違う人と会話をして身につける
- 6.管理職に必須のスキル
- 6.1.アクティブ・リスニング
- 6.2.コーチング
- 7.階層別の目標設定がスキル向上につながる
仕事は人と人との通じ合いで成り立つ
コミュニケーションスキルは、他者との間で意思疎通を円滑に行うために必要な能力です。さまざまな要素で構成されており、人同士が通じ合うことで成り立つビジネスにおいて重要視すべき能力といえます。
コミュニケーションスキルの要素
コミュニケーションスキルの基本となる三つの能力は、感情や行動をコントロールする自己統制力・自分の考えや気持ちを伝える表現力・相手の言葉を正しく読み取る読解力です。
また基本能力をベースにした対人スキルには、自分の意見や立場を受け入れてもらう自己主張力・相手を尊重し理解する他者受容力・周囲を良好な状態に整える関係調整力の3スキルがあります。
対人関係において、自分や相手の考え・意見をスムーズにやりとりするためには、これらの能力を複合的に働かせる必要があります。
コミュニケーションスキルの重要性
考えや意見の伝達方法が多様化している現代社会においては、あらゆる分野の事業で高いコミュニケーションスキルが求められています。
チームや組織の業務をよりスムーズに進めたり、顧客からのクレームに対し適切な回答を引き出したりするためにも、部署を限定せず全社的に向上させる必要があるでしょう。
昨今のビジネスシーンでは、会議や研修などの場をうまくまとめる「ファシリテーター」の重要性が高まっています。ファシリテーターには言葉だけでなく、態度でのコミュニケーションも必要です。
ITの現場でも、プログラマーとクライアントの間で架け橋の役割を果たすシステムエンジニアにはコミュニケーションスキルが欠かせません。
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コミュニケーションの種類とスキルアップ法
コミュニケーションには、言葉で表すタイプと声や表情など言葉以外の要素で伝えるタイプの2種類があります。それぞれの具体的な内容とスキルアップ法を紹介します。
言葉で表す『バーバルコミュニケーション』
言葉を使って意思疎通を図るタイプのコミュニケーション法が「バーバルコミュニケーション」です。対話だけでなくメールやチャット・手紙などによるやりとりも含まれます。
バーバルコミュニケーションでは、ボキャブラリーの多さや言葉の選び方、文法の使い方が重要なポイントになります。
例えばクレームを受け付けるカスタマーサポートのような現場では、適切な言葉遣いに注意する・相手を尊重する姿勢を言葉で表現するといった心掛けが重要です。
声や表情などで伝える『ノンバーバルコミュニケーション』
言葉以外の情報によるメッセージのやりとりが「ノンバーバルコミュニケーション」です。表情や仕草・視線などの視覚情報や、声色・話すテンポなどの聴覚情報で気持ちを伝える方法を意味します。
アメリカの心理学者メラビアンが提唱した法則では、話し手が与えるイメージの約9割はノンバーバルな(非言語の)要素で決定付けられるとされています。
コミュニケーションスキルを向上させるためには、言葉だけに頼るのではなく、非言語でメッセージを伝えるスキルを身につけなければなりません。
ノンバーバルコミュニケーションにおいては、個人が心理的安全を確保できる距離である「パーソナルスペース」が重要になります。不快感を与えない程度の適切な距離を保つ心掛けが、非言語コミュニケーションを上達させるカギです。
ロールモデルを立てて模倣から始める
スキルを効率よく高めるには、コミュニケーション上手な人をまねるのが一番の近道です。能力を伸ばしたい社員の身近にいる先輩などを、ロールモデルに立てるのがよいでしょう。
ロールモデルとは、行動や考え方の模範となりうる人のことです。言葉遣いや交渉力・プレゼン力などに長けた人をお手本とし、まねることを徹底させてみましょう。
ロールモデルが複数いれば、より効果を高められます。「普段の話し方」「プレゼン力」「傾聴スキル」などに分けてそれぞれにロールモデルを立てれば、複数の要素を同時に効率よく伸ばせます。
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相手と上手に付き合うためのポイント
コミュニケーションスキルを高める上で意識しておきたいポイントを紹介します。相手の心情を察せられるようになることや、怒りを抑える能力を身につけることが重要です。
キャリブレーションで察する
表情や声のトーンなど、言葉がなくても視覚・聴覚情報のみで相手の気持ちを察するスキルが「キャリブレーション」です。
話さずとも相手の心理状態を読み取って適切な行動をとれれば、安心感を与えられるため信頼関係を築きやすくなります。
様子を観察するだけで心情を把握できるスキルは、チームマネジメントにも役立つでしょう。メンバー同士の結束力を高められるため、生産性アップを期待できます。
ただしキャリブレーションは普段の様子が分かっている相手にしか使えないため、初対面の人に使うのは難しいでしょう。
アンガーマネジメントで穏やかに
コミュニケーションスキルの構成要素である自己統制力において、優先して習得しておきたいスキルが、怒りの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」です。
組織やチームに怒りを抱えている人がいると、周囲にも怒りをはじめとした負の感情が伝播しやすくなります。全体の雰囲気が悪くなることで生産性の低下にもつながりかねません。
アンガーマネジメントを習得すれば、怒りを感じても表に出さないようにようにコントロールできるようになります。感情的にならず自身の心情を落ち着いて説明できるようになるでしょう。
アンガーマネジメントでは、自分がどのようなことに対して怒りを感じやすいのかを把握する自己分析が重要です。
伝え上手になる方法
コミュニケーションスキルを高めるためには、自分の気持ちや考えを伝える表現力を磨くことが重要です。よく使われているコミュニケーションの手法や、より効果的にスキルアップを目指せる工夫を紹介します。
PREP法、SDS法の活用
言いたいことを相手にわかりやすく伝える手法として、代表的なものに「PREP法」と「SDS法」が挙げられます。
PREP法は、話す内容を簡潔かつスピーディーに伝えられる話法です。要点や結論を伝える「Point」・要点や結論の理由を示す「Reason」・具体例を挙げる「Example」・再度要点や結論を伝える「Point」の順に伝える内容を構成します。
SDS法は時間をかけて丁寧に伝えたいときに有効な話法です。全体の要約を示す「Summary」・具体例を交えて詳細を解説する「Details」・主張したいことを述べる「Summary」の順で話を進めます。
PREP法は簡潔さや伝達スピードが求められる報告書やメールを作成する場合に、SDS法は相手を説得する場面でそれぞれ効力を発揮するでしょう。
DESC話法を取り入れる
相手を納得させたいときに有効な技術が、話を4ステップに分解して伝える「DESC話法」です。自己主張だけでは解決できないような問題を合理的な解決に導けます。
DESC話法では、状況や事実を客観的に描写する「Describe」・自分の感情や意見を表す「Express」・相手に要求や提案をする「Specify」・結果を伝える「Consequences」の順に話を進めていきます。
相手が威圧感を醸し出していたり感情的になっていたりしても、納得させながら自分の主張を通せることがメリットです。何をすればいいのかを具体的に説明できるため、妥協案や譲歩案を示したいときにも使えます。
ゲームを通したスキルアップ
コミュニケーションスキルを向上させる研修を実施する際、ゲームを取り入れると効果的です。座学だけの研修に比べ退屈しにくく、学んだことが体感として身につくため、スキルを定着させやすくなります。
コミュニケーション研修のゲームに使えるツールとして、実践が難しいアサーション(相手の意見も聞きながら自己主張する概念)をカードゲーム化した教材などが販売されています。
研修担当がゲームまで考案と手間も時間もかかります。ツールをうまく取り入れて、楽しみながらコミュニケーションスキルを向上させられる研修を目指しましょう。
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聴き上手になる方法
コミュニケーションスキルを育てるには「相手の話を聴く力」が不可欠です。傾聴力や要約力を養い、聞き上手を目指しましょう。
3段階で傾聴力を向上させる
聴き上手になるためには、相手を理解し気持ちを汲み取ろうと努力しながら聴く「傾聴」と呼ばれるスキルの習得が必須です。三つのステップを順にクリアしていけば、傾聴力を着実に向上させられるでしょう。
最初のステップでは、とにかく聴くということを意識します。相手の話に集中し、相手のために聴く意識を持つことが大事です。相づちやうなずきなども織り交ぜましょう。
次のステップでは、聴きながら反応することを意識します。要約を伝え返したりより深く共感したりしながら、相手に合わせた表情やジェスチャーも入れ込むと効果的です。
最終ステップでは、積極的な傾聴で相手との関係性を深めます。言葉遣いに注意し、内容だけでなく話のスピードやテンポ・声の大きさと抑揚・呼吸・間などにも注意することが大事です。
要約力で論点を整理する
会話においては、相手が結局何を言いたいのかという「論点」を正確に理解することが重要です。
一般的に会話の多くは意見のみで構成されており、複数の論点を行き来しながら話が進むこともあるでしょう。話し手自身が論点を意識できていないケースも少なくありません。
相手の話から論点を導き出す方法としては、要約して聴き返すのが効果的です。話の途中でそれまでの内容をまとめて聴き返せば、相手も話を続けやすくなります。
読解力の向上も高い要約力につながります。日常的に触れる文章に対して、話題や結論は何なのかを意識しながら読むと論点を整理しやすくなるでしょう。
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信頼関係構築に欠かせない雑談力
相手との距離を縮めるためには「雑談力」も欠かせません。上手に雑談を進める方法や、雑談力を高める方法を紹介します。
相手を中心とした話し方で心をつかむ
多くの人は雑談で自分のことを話したがります。自分についての話題なら話しやすいこと、話す相手に興味を持ってもらいたいことなどが理由です。
この心理を利用して相手を中心に据えた会話を展開すれば、話している人の心をつかめるため雑談が盛り上がりやすくなるでしょう。
知らない話題が登場しても、質問を投げかけるだけで相手を中心に会話を進められます。質問から始めると話題を探す必要がなく、話しやすい空気を作れるのもメリットです。
毎日違う人と会話をして身につける
ビジネスシーンでは、年代や性別・立場などが異なる人と雑談する機会があるでしょう。相手の属性に関わらず気の利いた雑談ができるようになるには、日常的に接する人の範囲をできるだけ広げる意識が大切です。
狭いコミュニティーだけに身を置いていると、限定された人としか会話をしなくなります。毎日違う人と会話をすればさまざまなパターンの会話ができるため、雑談力を上げやすくなるでしょう。
普段はすれ違うだけのような人に対しても、あいさつの後にひと言プラスするだけで軽い雑談ができるようになります。
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管理職に必須のスキル
チームや組織を率いる立場の人にも、高いコミュニケーションスキルが求められます。コミュニケーションスキルの中でも、管理職に必要なスキルをチェックしておきましょう。
アクティブ・リスニング
近年、IT企業を中心に活用され始めているスキルが「アクティブ・リスニング」です。相手の言葉を積極的に傾聴し、相手の奥にある事実や感情を読み解く技術のことをいいます。
アクティブ・リスニングでは、相手の立場に立って考える「共感的理解」・否定せずに相手の価値観を受容する「無条件の肯定的関心」・表面的な言葉で繕わず誠実に向き合う「自己一致」を3原則に設定しています。
特に重要な原則が3番目の自己一致です。決して相手と駆け引きをすることなくありのままの状態で相手を受け入れられれば、信頼関係が高まり本音を引き出しやすくなります。
コーチング
これからの時代は、上から下へ一方的に指示やアドバイスを送る「支配型管理」に代わり、上下関係をなくし協働関係を構築する「支援型管理」が主流になっていくでしょう。
リーダーが支援役に徹し部下の能力を最大限に引き出せるようになるには、リーダーに「コーチング」を習得させるのが効果的です。コーチングでは、途中でそれまでの会話を振り返る「メタコミュニケーション」が行われます。
コーチ側が一方的にコーチングを進めていくのではなく、疑問点などを随時確認することで、双方向のコミュニケーションが活性化され効果を得やすくなります。
階層別の目標設定がスキル向上につながる
コミュニケーションスキルは、ビジネスで円滑な人間関係を構築するために必須のスキルです。聴く能力や伝える能力・自己判断力などを総合的に鍛えることで向上できます。
社員に求められるコミュニケーションスキルは役職や立場によって異なってくるため、それぞれの立場で必要とされる能力を重点的に向上させるのがポイントです。
立場ごとに身につけさせたいスキルの向上に役立つ手法や、社員が学びをより深められる研修なども導入し、階級別に目標を定めて全社的なスキルアップを図りましょう。