エンジニアを新卒採用する目的とメリットは?育成のポイントも解説
多くの企業では、事業計画や成長戦略に基づいて人材を採用します。新卒者は即戦力にはなりませんが、組織の活性化や先輩社員の成長など、企業に多くのメリットをもたらすでしょう。エンジニアを新卒採用する目的や育成のポイントを解説します。
目次[非表示]
- 1.エンジニアを新卒採用する目的とは?
- 1.1.職場の年齢構成の是正
- 1.2.次世代リーダー候補者の育成
- 1.3.優秀な人材の確保
- 2.新卒採用のメリット
- 2.1.硬直化した組織が活性化する
- 2.2.企業文化や価値観が受け入れられやすい
- 2.3.既存社員の指導能力が向上する
- 3.新卒採用のデメリット
- 3.1.採用のミスマッチが発生しやすい
- 3.2.選考プロセスが複雑で長い
- 4.新卒者の選考プロセスとは?
- 4.1.採用計画の策定・募集
- 4.2.書類選考・面接
- 4.3.内定出し・フォロー
- 5.新卒者の人材育成はどうする?
- 5.1.中途入社者研修との違い
- 5.2.研修は内製で進めるべき?
- 6.新卒採用の目的と必要性を明確にしよう
エンジニアを新卒採用する目的とは?
新卒採用とは、原則としてその年度に専門学校や大学などを卒業予定の学生を採用することを指し、卒業後3年以内なら新卒扱いとする企業もあります。即戦力として期待できないにもかかわらず、企業が新卒のエンジニアを採用する目的や理由は何でしょうか?
職場の年齢構成の是正
新卒を採用する目的の一つに、職場の年齢構成の是正が挙げられます。ある年齢層の社員が極端に少ない、または多い場合、業務の遂行や事業の存続に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、20~30代の若手社員が不足する職場では、技能の継承が困難になる恐れがあるでしょう。ベテラン社員が退職すれば、その後を穴埋めできる人材がいなくなり、生産性の低下や企業の競争力の減退につながります。
企業は中長期的な成長戦略に基づいて新卒者を採用し、適正な年齢構成を維持する必要があります。
次世代リーダー候補者の育成
次世代リーダー候補者を育成するために、新卒採用を行う企業もあります。
次世代リーダー候補者とは、将来的に経営者や経営幹部、上位管理職などのポジションに就き、業績のけん印を期待されている人材です。 近年は、新卒採用の際に「次世代リーダー候補者枠(幹部候補者枠)」を設ける企業が増えており、優秀な人材の確保と育成に力を入れていることがうかがえます。
リーダーの育成計画は、採用段階から始まっているといってもよいでしょう。 新卒者はスキルや社会経験こそ乏しいですが、中途入社者のように前職の企業文化に染まっておらず、自社の理念や価値観を伝えやすいのがメリットです。十分な育成期間があるため、自社に適合した人材に育つ可能性が高いでしょう。
優秀な人材の確保
新卒者以外の優秀な人材は在籍中の企業で優遇されており、転職市場に出てくるケースはほとんどありません。一方、新卒者は市場に出てくる数そのものが多いため、企業は優秀な人材を確保しやすいのです。
中途採用は、即戦力となるスキルや実績が重視される「キャリア採用」ですが、新卒採用は、資質や潜在能力を評価する「ポテンシャル採用」です。ポテンシャルのある人材を確保し、時間をかけて育成すれば、企業の中軸を担う社員に成長します。
IT業界は人手不足といわれていますが、今後はこれまでのIT需要が次第に縮小し、AIやビッグデータを使いこなせる人材の需要が高まると見込まれています。 ただ単にIT人材の数を増やすのではなく、先端技術にも対応できる柔軟性のある人材を確保・育成していくことが重要です。
新卒採用のメリット
(出典) pexels.com
採用計画は企業の将来を左右する重要なプロセスです。新卒採用には中途採用にはない多くのメリットがあり、組織を大きく成長させる可能性を秘めています。新卒採用がもたらす代表的なメリットを見ていきましょう。
硬直化した組織が活性化する
古参の社員のみで構成される職場は、特定の年代に社員が偏ったり、平均年齢が高くなったりして、思考や行動が固定化されやすい点がデメリットです。 あうんの呼吸で仕事をしていると、チーム内のコミュニケーションが最低限で済むため、新しいアイデアが創出されにくい傾向があるでしょう。
新卒を採用すると平均年齢が引き下がり、チーム全体が若返ります。「言わなくても分かるだろう」が通用しなくなり、既存社員はこれまでのやり方を見直す必要が生じるでしょう。新卒者からの質問やアイデアに触れることで、組織が活性化するのです。
IT分野は技術の進展が目覚ましく、これまでの知識や技術が今後も通用するとは限らないのが実情です。最先端技術やトレンドと親和性が高い若年層を迎え入れれば、チームのアップデートにつながります。
企業文化や価値観が受け入れられやすい
新卒者にとって、卒業後に入社する企業は「初めて働く会社」です。他社を経験していない分、その企業の理念や価値観、文化になじみやすく、企業が求める人材に育てられます。
他方で中途入社者は、前職で培った価値観や自分のやり方が身に染み付いているため、新たな環境になじめないケースも少なくありません。前職でのやり方に固執して既存社員との間に摩擦が生じれば、即戦力としての意味がなくなってしまいます。
新卒者に比べて転職に抵抗がなく、よりよい待遇の企業があればすぐに離職する可能性も考えられるでしょう。
既存社員の指導能力が向上する
新卒者には、既存社員が暗黙の了解で行ってきたやり方が通用しません。言語化して分かりやすく伝える努力の過程で、既存社員の指導能力が大きく向上するのがメリットです。
新卒者が入れば、入社2年目の社員は先輩になります。新人への指導を通して責任感が芽生える上、業務に対する理解もより深まるでしょう。チームのリーダーに欠かせないマネジメント能力も、徐々に培われていきます。
新卒採用のデメリット
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「新卒は即戦力になりにくい」という事実は多くの企業が知るところですが、新卒採用をする上でのデメリットや注意点はほかにもあります。中途採用か新卒採用かで迷っているのであれば、デメリットをよく比較する必要があるでしょう。
採用のミスマッチが発生しやすい
新卒採用は、面接における「採用のミスマッチ」が発生しやすいのが難点です。自社に合わない人材を採用すると早期離職につながり、採用・育成に費やしたコストが無駄になってしまいます。
中途採用の場合、これまでの経歴や実績、保有スキルなどから、入社後に活躍する姿がイメージしやすいものです。しかし新卒者には目に見える実績がないため、そのポテンシャルを面接官が見極めなければなりません。
しかしポテンシャルや熱意、資質といった内面的要素は評価が難しく、面接官によって判断が分かれるケースも多いものです。面接官としての経験やスキルが不十分な場合、期待外れの人材を採用してしまう可能性が高いでしょう。
選考プロセスが複雑で長い
新卒採用は、選考プロセスが複雑で長いのがデメリットです。企業によっても異なりますが、翌年4月の入社に向けて3月頃から説明会や面接などを実施するのが一般的なので、選考プロセスには1年ほどかかります。
学生との接点を作るため、大学3年生の夏休みにサマーインターンを実施する企業もあります。この場合、選考プロセスに2年近くの期間が費やされることになるでしょう。 新卒採用は、早く動けば動くほど優秀な人材を確保できる確率が高まりますが、選考プロセスの長期化は、人事担当者の負担を増大させます。
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新卒者の選考プロセスとは?
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新卒採用の経験が浅い企業は、選考プロセスをしっかりと把握し、スタートに出遅れないように準備を進めなければなりません。選考プロセスの内容を3段階に分けて解説します。
採用計画の策定・募集
まずは企業の事業計画や成長戦略に基づいた採用計画を策定します。
採用計画とは、「説明会や面接をいつ行うか」「どんな人材を何人採用するか」といった採用活動全体のスケジュールのことです。人事部だけでなく、社内の関係者全員に共有しましょう。
採用計画を策定したら、募集活動をスタートします。募集方法は「自社サイトへの情報掲載」や「SNSを使った採用方法(ソーシャルリクルーティング)」「求人サイトの活用」などが代表的です。 応募があった学生に対しては、会社説明会を実施します。企業と学生が初めて接触する機会なので、自社の魅力をしっかり発信する必要があります。
書類選考・面接
応募者に履歴書やエントリーシートを提出してもらった後は、社内で書類選考を行います。応募者が採用条件に適合しているかを判断するプロセスなので、選考基準や求める人物像を明確にし、担当者間で共有しておかなければなりません。
企業によっては、一般常識や教養の有無を確認する「筆記試験」や、応募者の性格特性や知的能力などを見る「適性検査」を実施します。 書類選考や筆記試験を通過した学生は面接に進みます。社会経験のない新卒者の場合、性格やポテンシャルなどの内面的要素の見極めが中心となるでしょう。
緊張で本来の姿を出せない学生も多いため、面接官には相手の本音や素の姿を引き出すスキルが求められます。
内定出し・フォロー
内定者への内定出しは、電話で結果を伝えた後に「内定通知書」を送付するのが一般的です。 多くの学生は並行して就職活動を行うため、内定の連絡が遅れると優秀な人材が他社に流れてしまう可能性があります。結果を待つ応募者を不安にさせないためにも、早めの準備を心掛けましょう。
内定承諾後は、内定者フォローを行います。優秀な学生は引く手あまたなので、企業側が自社の魅力を伝え適切にフォローしなければ、内定を辞退される可能性もゼロではありません。 内定者懇親会や社内イベント、面談などを実施し、内定者との距離を縮めるのがポイントです。
新卒者の人材育成はどうする?
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採用計画を策定する際は「採用後の人材育成」も視野に入れましょう。新卒研修は中途入社者研修に比べ、多くの時間やコストが費やされます。
中途入社者研修との違い
新卒者が入社した後は、人事部主導で「新入社員研修(新人研修)」を実施するのが一般的です。中途入社者研修は、社会経験のある人を対象とするため、内容は経営理念の理解や社内ルールの確認、技術の習得などがメインとなります。
新卒研修では、社会人としての心構えやビジネスマナー、指示の受け方といった基本的なスキルを身に付ける必要があり、中途入社者研修よりも時間がかかります。研修期間は、少なくとも3カ月は見ておきましょう。
研修は内製で進めるべき?
新卒研修には、内製と外注の2パターンがあります。どちらにも利点があるため、自社の状況に合った方法を採用しましょう。
最新の知識や情報は外注し、自社の独自技術に関しては内製で進めるといったように、内製と外注を使い分ける手もあります。 新卒研修の内製は、社内の諸事情を勘案した上で独自のカリキュラムを組めるのがメリットです。社員が講師となるため、指導スキルも身に付きます。
外注には、プロの講師による専門性の高い研修が受けられるというメリットがあります。社内のリソースを使わずに済む上、短期間で効率よく研修が行えるでしょう。
「ジョブサポート」の場合、システムエンジニアやプロエンジニアに求められる仕事の基礎が2~3カ月で学べます。研修終了後は、技術力とビジネスマナーの両方が身に付いた状態になるため、業務にスムーズに移行できるでしょう。
新卒採用の目的と必要性を明確にしよう
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新卒採用は選考プロセスが長く、入社後の戦力化にも時間やコストがかかります。企業は「新卒でなければならない理由は何か」を明確にした上で、採用計画を立てなければなりません。 目的や必要性が曖昧なまま採用を進めれば、ミスマッチによる早期離職で、費やしたコストや労力が無駄になってしまいます。
また、新卒者がスムーズに現場に入っていくためには、手厚いフォローと充実した新卒研修が欠かせません。内製と外注をうまく組み合わせながら、自社に合った研修内容を考えましょう。