
新人エンジニアに厳しく指導できない…社内OJTの限界と外部研修という選択肢
この記事の結論
社内OJTで新人エンジニアに「厳しく指導しにくい」と感じるのは、指導担当者個人の力量や意識の問題ではありません。調査では、OJT担当者の約75%がハラスメントを懸念して指摘を躊躇した経験があることが分かっており、業務上の指示と教育的な指導の境界が曖昧になりやすいという社内構造そのものに原因があります。この構造的な制約から離れて指導できるのが、評価権限を持たない外部の第三者による研修です。
本記事は、ジョブサポートが研修終了後に実施している「研修終了報告」(人事・開発部門責任者・経営層など先方の関係者への聞き取り)で直接伺った実態と、5年以内に新卒・若手エンジニアの教育を担当した1,004名を対象に実施した調査「Z世代エンジニアに対するOJT指導の難易度と指導担当者の負担の実態」のデータに基づいています。調査の全データはホワイトペーパー(無料DL)でご覧いただけます。
新人エンジニアの育成において、「厳しく指導したいが、ハラスメントと言われないか不安」という声を、研修先の人事担当者・経営層・開発部門責任者から数多くいただく機会が増えました。本記事はそこで直接伺った実態をもとに、社内指導の現場で起きている課題と解決の方向性を解説します。
なぜ社内OJTだと厳しく指導できないのか
企業から「厳しく指導してほしい」という要望が増えている背景は?
背景には、働き方改革やハラスメントに対する意識の高まりにより、社内のOJT担当者が指導そのものに慎重にならざるを得ない状況があります。ジョブサポートが実施している「研修報告」の場でも、「本当は厳しく指導したいけど・・・社内では難しい」という趣旨の声を伺う機会が増えています。
この背景は、弊社が実施した1,004人のOJT担当者を対象とした調査結果とも合致します。調査では、配属前の段階で自走力を育成しておいてほしいという声が51.6%にのぼり、社内での指導だけでは育成が追いつかないと感じている企業が多いことが分かっています。
厳しい指導へのニーズは、精神論的な「甘やかすな」という話ではなく、社内OJTだけでは補いきれない育成上の限界を企業側が実感し始めていることの表れだと考えられます。
具体的には、どのような若手の行動が企業の悩みの種になっているのか?
具体的には、業務時間外の自己啓発をめぐる線引きが、企業担当者を悩ませる典型例です。「学習は業務時間内に完結させてほしい」と受け止める新人がいる一方で、企業側が自己啓発を促すこと自体を「事実上の業務指示ではないか」と受け取られかねないという難しさがあります。特にコンプライアンスを重視する企業ほど、この懸念から強く言い出しにくい傾向にあります。
その結果として顕在化しているのが、自主的に自己啓発に取り組む新人と、そうでない新人との間で成長スピードに差がつく実態です。特にプログラミングのように理解の積み重ねが必要な領域では、学習を継続しなければ土台が固まらず、開発職として戦力化することができません。開発職として採用したにもかかわらず、いつまでも若手向けのポジションから抜け出せないという状況も起こり得ます。特に未経験からの採用者で自主学習が進まない場合、教育期間だけが長期化しがちです。
中堅社員から「もっと厳しく指導してほしい」という声が上がる背景には、こうしたコスト面のジレンマもあります。初任給も教育にかける期間も、自分たちが新人だった頃より手厚くなっているにもかかわらず、新人が思うように戦力化しない——このコストと成果のギャップが、現場の苛立ちにつながっているケースは少なくありません。
もちろん、自己啓発への取り組み方だけが問題ではありません。指示があるまで動かず自ら課題を見つけようとしない(調査でも38.1%の指導担当者がこの傾向を指摘)、指摘やアドバイスを素直に受け入れず言い訳や反発、時にはマウントを取るような態度を示す(同調査で28.5%が経験)といった声も、現場からは多く聞かれます。本来であればこうした態度に厳しく指摘すべき場面でも、「ハラスメントと言われるのでは」という懸念から、企業側が結果的に過保護な配慮をせざるを得ない状況に陥っているのが実態です。
若手社員への配慮が過保護になりやすい背景には、自己啓発への取り組み方や受け身な姿勢への対応が、業務指示との線引きやハラスメントへの懸念と結びつきやすいという事情があります。
社内OJTで指導が難しくなっている具体的な理由は?
「厳しく指導したい」という思いがあっても、実際に社内で実行するのは簡単ではありません。理由の一つは、業務上の指示と教育的な指導の境界が曖昧になりやすいことです。たとえば「もっと丁寧に確認してから提出してほしい」という何気ない一言も、上司から部下への発言である以上、本人には評価に直結する業務指示として受け取られる可能性があります。

もう一つの理由は、日常的な上下関係の中でヒューマンスキルの指導を行うことに伴う心理的な負担です。技術的な誤りの指摘であれば比較的伝えやすい一方、態度や姿勢といった人間性に関わる部分への指導は、受け手の感じ方次第でハラスメントと受け止められるリスクがあります。ジョブサポートの独自調査結果でも、OJT担当者の約7割がリスクを恐れ、指導を躊躇したと回答があります。評価者と被評価者という関係性が常に存在する社内では、指導する側もその線引きに神経を使わざるを得ず、結果として「言いにくいから言わない」という選択に傾きやすくなります。研修報告でも、こうした「言いたいが言えない」というジレンマを人事・現場マネージャー双方から伺うことが少なくありません。
指導の難しさとは、業務上の指示と教育的な指導の境界が曖昧になりやすいこと、そして評価関係の中でヒューマンスキルを指導することに伴う心理的な負担を指します。
外部研修だからできること、社内に浸透させる方法
なぜ外部の研修であれば厳しい指導がしやすいのか?
外部の研修講師は、受講者の日常業務における評価や査定に関与しません。この「評価権限を持たない第三者である」という立場が、厳しい指導を可能にする最大の要因です。
社内の上司であれば、指導の言葉ひとつが人事評価や今後のキャリアと結びついて受け取られる可能性がありますが、研修講師の指導はあくまで教育目的の範囲内であることが受講者にも伝わりやすく、業務指示との混同が起きにくい構造になっています。
また、研修という期間限定の場であることも重要です。「今この期間、成長のために厳しく指導される」という前提を受講者自身が受け入れやすく、指導する側・される側の双方が、この関係性は評価のためではなく教育のためだと共有できていることが、遠慮のない指導を可能にしています。ジョブサポートでは、この「教育に特化した第三者」という立場を活かし、技術指導だけでなく報連相やビジネスマナーといったヒューマンスキル面についても、社内では踏み込みにくい領域まで踏み込んだ指導を行っています。
こうした個別指導の過程で採用選考の段階では見えていなかった課題が明らかになることもよくあり、その内容は配属先の申し送り事項として共有しています。
個別の受講者に合わせて指導の強弱を変えるとは、具体的にどういうことか?
指導の強弱とは、明文化された一貫した教育方針を保ちながら、受講者の性格や理解度に応じて伝え方や踏み込み方を個別に調整することです
「厳しく指導する」といっても、講師の主観や好みで対応を変えているわけではありません。ジョブサポートでは「仕事の心構えの教育方針」として、「納期意識を持つ」、「バッドニュースファースト」、「指摘は否定ではない」、「迅速に行動する」、「疑問を放置しない」、「復習を徹底する」、といった業界・職種を問わず必要とされる心構えを明文化、技術指導と並ぶ研修のゴールの一つとして位置づけ、受講者とも研修初日に時間をかけて説明しています。この基準があることで、「何を、どこまで指導するか」が講師個人の感覚に依存せず、一貫した軸のもとで判断できる仕組みになっています。実際、プロエンジニア育成コースの受講者の95%が、受講前後で仕事に対する意識の変化を実感しています。
一方で、この基準に沿って指導する中でも、伝え方や踏み込み方の「強弱」には個別の調整が必要です。同じ指摘であっても、受講者の性格や理解度、心理状態によって受け止め方が異なるためです。たとえば、研修の進捗に不安が見える受講者には、頭ごなしに指摘を重ねるのではなく、まず研修のサポート時間を多めに確保し、個別に理解度を丁寧に確認しながら伴走する、といった対応を取っています。基準は一貫させながらも、届け方は個々に合わせるのがジョブサポートの指導における強弱の意味です。
こうした個別のやり取りは、前項で触れた採用選考時には見えなかった課題の発見にもつながり、配属先への申し送りとして役立てています。
この教育方針、社内で理解を得るにはどうすればよいか?
「厳しく指導してほしい」という要望は、社内で温度差が生まれやすいテーマです。ジョブサポートが研修終了報告を通じて伺う限り、この方針に強く共感し、積極的な反応を示すのは経営層・配属先が多い一方、実際に運用を担う現場の人事担当者は慎重な反応を示す傾向があります。
経営層がこの方針に反応しやすいのは、自走力不足によるOJT担当者の負担増や配属後の早期離職が育成コストの増大という経営課題に直結して見えるためです。1,004人のOJT担当者を対象とした調査でも、約8割が指導負担の増加を、約70%が離職・異動の検討を実感しているという結果が出ており、この方針は課題解決への投資として理解されやすい構造です。
一方、現場の人事担当者が慎重になる背景には、より直接的な事情があります。多くの企業では、離職率や定着率が人事部門自身の評価指標に組み込まれており、厳しい指導によって早期離職が発生した場合、その結果が人事担当者自身の評価に跳ね返ってくる可能性があります。つまり、経営層が「厳しく指導してほしい」と求める一方で、人事評価の仕組み自体は「離職者を出さないこと」を求めている場合、両者の間には見過ごされがちな不整合が存在します。この不整合が解消されないまま「厳しく指導して」という方針だけが降りてくると、現場が萎縮するのは自然な結果であり、これは現場の姿勢の問題ではなく、評価制度の設計上の課題だといえます。
この方針を社内に浸透させるには、指導方針の共有だけでなく、経営層が現場の評価軸を見直す必要があります。厳しい指導を推奨するのであれば、短期的な離職の発生を人事評価上どう扱うかについても、整理しておくことが望ましいです。
その上で、ジョブサポートのような日常の評価関係を持たない外部の第三者が教育を担うことで、指導の責任の所在という論点そのものを切り分けることができます。経営層が期待する「厳しさ」、現場人事が抱えるリスク、指導の主体を社内か社外かで分けることで、評価制度を変えずとも一定程度両立させることが可能です。
評価軸の不整合とは、経営層が「厳しく指導してほしい」と求める一方で、人事評価の仕組み自体は「離職者を出さないこと」を求めているという、社内で見過ごされがちなズレを指します。
まとめ
社内OJTだけでは厳しい指導が難しい理由と、外部研修による解決の方向性を整理すると、次の4点になります。
- 厳しい指導へのニーズは精神論ではなく、社内OJTだけでは補いきれない育成上の課題への現実的な対応策である
- 業務指示との境界の曖昧さと、日常的な評価関係が、社内での厳しい指導を難しくしている
- 評価権限を持たない外部の第三者だからこそ、明文化された教育方針のもとで一貫性を保ちながら、受講者に合わせた指導の強弱をつけられる
- 社内に浸透させるには、指導方針の共有だけでなく、経営層と現場人事の間にある評価軸の不整合を解消することが重要である
新人エンジニアの育成体制について、御社の状況に合わせたご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。












