
新人エンジニアに厳しく指導できない…社内OJTの限界と外部研修という選択肢
新人エンジニアの育成において、「厳しく指導したいが、ハラスメントと言われないか不安」という声を、研修先の人事担当者・経営層・開発部門責任者から数多くいただく機会が増えました。ジョブサポートでは研修終了後に「研修終了報告」として、人事・開発部門責任者・経営層など先方の関係者への聞き取りを実施しております(参加者は企業規模により異なり、人事と開発マネージャーや現場OJT担当者の組み合わせが多い傾向にあります)本記事はそこで直接伺った実態をもとに、社内指導の現場で起きている課題と解決の方向性を解説します。
Q1. 企業から「厳しく指導してほしい」という要望が増えている背景は?
新人エンジニアの育成において「もっと厳しく指導してほしい」と研修先の企業から数多くいただくようになっています。背景には、働き方改革やハラスメントに対する意識の高まりにより、社内のOJT担当者が指導そのものに慎重にならざるを得ない状況があります。ジョブサポートが実施している「研修修了報告」時に、「本当は厳しく指導したいけど・・・社内では難しい」という趣旨の声を伺う機会が増えています。
この背景は、弊社が実施した1,004人のOJT担当者を対象とした調査結果とも合致します。調査では、配属前の段階で自走力を育成しておいてほしいという声が51.6%にのぼり、社内での指導だけでは育成が追いつかないと感じている企業が多いことが分かっています。厳しい指導へのニーズは、決して精神論的な「甘やかすな」という話ではありません。社内OJTだけでは補いきれない育成上の限界を企業側が実感し始めていることの表れだと考えられます。
Q2. 社内OJTで指導が難しくなっている具体的な理由は?
「厳しく指導したい」という思いがあっても、実際に社内で実行するのは簡単ではありません。理由の一つは、業務上の指示と教育的な指導の境界が曖昧になりやすいことです。たとえば「自主的に勉強してほしい」という声かけひとつをとっても、上司から部下への発言である以上、本人には業務指示として受け取られる可能性があります。
もう一つの理由は、日常的な上下関係の中でヒューマンスキルの指導を行うことに伴う心理的な負担です。技術的な誤りの指摘であれば比較的伝えやすい一方、態度や姿勢といった人間性に関わる部分への指導は、受け手の感じ方次第でハラスメントと受け止められるリスクがあります。評価者と被評価者という関係性が常に存在する社内では、指導する側もその線引きに神経を使わざるを得ず、結果として「言いにくいから言わない」という選択に傾きやすくなります。ジョブサポートの研修終了報告でも、こうした「言いたいが言えない」というジレンマを人事・現場マネージャー双方から伺うことが少なくありません。
Q3. なぜ外部の研修であれば厳しい指導がしやすいのか?
外部の研修講師は、受講者の日常業務における評価や査定に関与しません。この「評価権限を持たない第三者である」という立場が、厳しい指導を可能にする最大の要因です。社内の上司であれば、指導の言葉ひとつが人事評価や今後のキャリアと結びついて受け取られる可能性がありますが、研修講師の指導はあくまで教育目的の範囲内であることが受講者にも伝わりやすく、業務指示との混同が起きにくい構造になっています。
また、研修という期間限定の場であることも重要です。「今この期間、成長のために厳しく指導される」という前提を受講者自身が受け入れやすく、指導する側・される側の双方が、この関係性は評価のためではなく教育のためだと共有できていることが、遠慮のない指導を可能にしています。ジョブサポートでは、この「教育に特化した第三者」という立場を活かし、技術指導だけでなく報連相やビジネスマナーといったヒューマンスキル面についても、社内では踏み込みにくい領域まで踏み込んだ指導を行っています。こうした個別指導の過程で採用選考の段階では見えていなかった課題が明らかになることもよくあり、その内容は配属先の申し送り事項として共有しています。
Q4. 個別の受講者に合わせて指導の強弱を変えるとは、具体的にどういうことか?
「厳しく指導する」といっても、講師の主観や好みで対応を変えているわけではありません。ジョブサポートでは「仕事の心構えの教育方針」として、納期意識を持つ、バッドニュースファースト、指摘は否定ではない、迅速に行動する、疑問を放置しない、復習を徹底する、といった業界・職種を問わず必要とされる心構えを明文化、技術指導と並ぶ研修のゴールの一つとして位置づけ、受講者とも研修初日に時間をかけて説明しています。この基準があることで、「何を、どこまで指導するか」が講師個人の感覚に依存せず、一貫した軸のもとで判断できる仕組みになっています。実際、プロエンジニア育成コースの受講者の95%が、受講前後で仕事に対する意識の変化を実感しています。
一方で、この基準に沿って指導する中でも、伝え方や踏み込み方の「強弱」には個別の調整が必要です。同じ指摘であっても、受講者の性格や理解度、心理状態によって受け止め方が異なるためです。たとえば、研修の進捗に不安が見える受講者には、頭ごなしに指摘を重ねるのではなく、まず研修のサポート時間を多めに確保し、個別に理解度を丁寧に確認しながら伴走する、といった対応を取っています。基準は一貫させながらも、届け方は個々に合わせるのがジョブサポートの指導における強弱の意味です。
こうした個別のやり取りは、Q3で触れた採用選考時には見えなかった課題の発見にもつながり、配属先への申し送りとして役立てています。
Q5. この教育方針、社内で理解を得るにはどうすればよいか?
「厳しく指導してほしい」という要望は、社内で温度差が生まれやすいテーマです。ジョブサポートが研修終了報告を通じて伺う限り、この方針に強く共感し、積極的な反応を示すのは経営層・配属先が多い一方、実際に運用を担う現場の人事担当者は慎重な反応を示す傾向があります。
経営層がこの方針に反応しやすいのは、自走力不足によるOJT担当者の負担増や配属後の早期離職が育成コストの増大という経営課題に直結して見えるためです。1,004人のOJT担当者を対象とした調査でも、約8割が指導負担の増加を、約70%が離職・異動の検討を実感しているという結果が出ており、この方針は課題解決への投資として理解されやすい構造です。
一方、現場の人事担当者が慎重になる背景には、より直接的な事情があります。多くの企業では、離職率や定着率が人事部門自身の評価指標に組み込まれており、厳しい指導によって早期離職が発生した場合、その結果が人事担当者自身の評価に跳ね返ってくる可能性があります。つまり、経営層が「厳しく指導してほしい」と求める一方で、人事評価の仕組み自体は「離職者を出さないこと」を求めている場合、両者の間には見過ごされがちな不整合が存在します。この不整合が解消されないまま「厳しく指導して」という方針だけが降りてくると、現場が萎縮するのは自然な結果であり、これは現場の姿勢の問題ではなく、評価制度の設計上の課題だといえます。
この方針を社内に浸透させるには、指導方針の共有だけでなく、経営層が現場の評価軸を見直す必要があります。厳しい指導を推奨するのであれば、短期的な離職の発生を人事評価上どう扱うかについても、整理しておくことが望ましいです。
その上で、ジョブサポートのような日常の評価関係を持たない外部の第三者が教育を担うことで、指導の責任の所在という論点そのものを切り分けることができます。経営層が期待する「厳しさ」、現場人事が抱えるリスク、指導の主体を社内か社外かで分けることで、評価制度を変えずとも一定程度両立させることが可能です。
まとめ
新人エンジニアへの「厳しい指導」は、精神論ではなく社内OJTだけでは補いきれない育成上の課題への現実的な対応策です。しかし、働き方改革やハラスメント意識の高まり、業務指示との境界の曖昧さ、日常的な評価関係が社内での実行を難しくしています。外部研修という評価権限を持たない第三者の立場だからこそ、明文化された教育方針のもとで一貫性を保ちながら、受講者一人ひとりに合わせた指導の強弱をつけることができます。またこの方針を社内に浸透させるには、指導方針の共有だけでなく、経営層と現場人事の間にある評価軸の不整合を解消することも重要です。
新人エンジニアの育成体制について、御社の状況に合わせたご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。












