新人エンジニアが課題や指示の理解に悩むアイキャッチ画像。「要点がわからない」「指示の意図は?」「どう書けばいい?」と葛藤する姿を通じ、生成AI時代の新人エンジニアの成長を阻む読解力・言語化能力の課題と解決策を解説したノウハウ画像(1,004名調査/ジョブサポート調べ)。

新人エンジニアの成長が遅い原因は“読解力不足”?生成AI時代の研修課題【1,004名調査】

この記事の結論

株式会社ジョブサポートが直近2年間でOJT指導を担当した1,004名を対象に実施した調査では、新人エンジニアの約9割が生成AIを日常的に活用している一方、AIが出したコードのエラーを自力で解決できない新人が増加していることが分かりました。原因は生成AIそのものではなく、利用者側の「読解力」の不足にあります。この状態はOJT担当者の負担増加にも直結しており、約80%が指導負担の増加を実感しています。本記事では、調査データをもとに、生成AI時代における新人エンジニア研修の課題と3つの対策を解説します。

本記事のデータは、直近2年以内に新卒・若手エンジニアのOJT指導を担当した1,004名を対象に実施した調査「新人エンジニアの生成AI利用実態と指導負担」に基づいています。

「OJT担当者を任命したのに新人が育たない」「指導しても同じ質問が繰り返される」——このような課題を抱える現場は少なくありません。生成AIの普及により、未経験エンジニアであっても一定水準のアウトプットを出せる環境が整いました。しかしその裏側では、「自走できない」「AIの出力を理解しないまま使ってしまう」といった新たな課題が、多くの企業のOJT現場で顕在化しています。

①新人エンジニアの約9割が生成AIを活用している

生成AI活用実態について、新人エンジニアが業務の中でコード生成・エラー対応・情報収集などにAIツールをどの程度日常的に使っているかを指します。

調査の結果、新人エンジニアの約9割が生成AIを日常的に業務で活用していることがわかりました。主な用途は次の3つです。

生成AIの主な用途3つ

  • コード生成:関数やクラスなど、コードの雛形を生成AIに書かせる
  • エラー解決:発生したエラーメッセージをAIに入力し、修正案を得る
  • 調査・情報収集:わからない用語や仕様をAIに質問し、概要を把握する

生成AIの活用により、これまで時間のかかっていた作業を大幅に効率化できるようになりました。特に未経験のエンジニアにとっては、学習のハードルを下げ、「まず手を動かしてみる」というきっかけを作る重要なツールになっています。しかし、この「手軽さ」が次章で解説する新たな課題の起点にもなっています。

②「解決できても理解していない」状態が新たな課題

「解決はできても理解していない」状態とは、生成AIの力でエラーやタスクを表面上クリアできても、その理由や仕組みを本人が説明できない状態を指します。

現場では、生成AIを使ったエラー対応において、次のような状態が増えています。

  • エラー内容を読まずAIに投げる:エラーメッセージを自分で読解する前に、そのままAIへ貼り付けて修正案を求める
  • 解決しても再現できない:同じエラーが再発した時、前回と同じ手順で自力対応できない
  • 表面的な理解で止まる:修正コードは動いても、なぜそのコードで解決したのかを説明できない

この状態は、短期的には成果が出ているように見えても、中長期的な成長にはつながりません。結果として現場配属後に自走できず、OJT担当者への依存が増加するというサイクルが生まれます。

③課題の本質は「読解力」の不足にある

読解力不足とは、エラーメッセージや公式ドキュメント、タスクの前提条件などを正しく読み取り、要点を押さえて理解する力が不足している状態を指します。

この問題の本質は、生成AIそのものではありません。利用者側の「読解力」の不足にあります。読解力不足には、大きく2つの側面があります。

  • 読めない(理解力の問題):エラーメッセージや公式ドキュメントの英文・専門用語を、要点を押さえて読み取れない。仕様書に書かれている前提や制約を正確に解釈できない
  • 読まない(態度・習慣の問題):最後まで目を通さず、途中で読むのをやめてAIやツールの提示する答えに飛びついてしまう(読み飛ばし)。前提条件を汲み取れず、的外れな対応をしてしまう

「読めない」は訓練で伸ばせる力ですが、「読まない(読み飛ばす)」は習慣・姿勢の問題であり、対策のアプローチが異なります。生成AIは、あくまで「回答を提示するツール」です。その回答を理解して応用できるかは、利用者自身の読解力に依存します。読解力が不足した状態、あるいは読み飛ばしが常態化した状態では、AIの出力は「答え」ではなく、中身のわからない「ブラックボックス」になってしまいます。

生成AIは、優秀な先輩のような存在です。しかし、先輩がどれだけ丁寧に長文で説明しても、最後まで読まずに勘違いをしていたら結果は変わりません。生成AIを使いこなすためには、テクニックやプロンプトの工夫以上に「説明を正しく理解する力」、つまり読解力そのもの——そして読み飛ばさずに最後まで読み切る姿勢——が必要なのです。

さらに、生成AIには新人エンジニアの成長を阻害する側面もあります。正解にすぐ辿り着けるため自分で仮説を立てて検証するプロセスが失われる(試行錯誤の機会が減る)、「なぜそうなるのか」を考える前にAIの回答をそのまま採用してしまう(思考プロセスの省略)、背景や仕様を理解しないまま動くコードという結果だけを手に入れてしまう(文脈理解の欠落)——この3つが重なることで、本来「考えれば分かるはずの問題」を考えなくなり、基礎力の定着が遅れていきます。重要なのは、生成AIを使うこと自体ではなく「どのように使うか」です。

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④放置された読解力不足が、"経験年数"だけの人材を生む

放置された読解力不足とは、新人研修や配属直後に読解力の課題が発見されないまま、年数だけを重ねてしまう状態を指します。

読解力の課題が新人研修中や配属直後に発見される場合、まだ対処のしようがあります。問題は、気づかれないまま放置されるケースです。

①指示の意図を正しく理解できない
指示を誤解したまま着手、一通り完了させたあとにやり直し(手戻り)が発生します。結果として、作業時間が本来の2倍以上に膨らみます。

②前提や背景を読み取れない
調べても理解できず、上司や先輩に依存する状態になります。同じ質問が繰り返され、本人だけでなく周囲の時間も奪われます。

③自分の理解が正しいか判断できない
「分かりました」と答えても改善が見られません。何が問題かを本人が理解していないため、同じミスを繰り返し、フィードバックが機能しなくなります。

本来の成長プロセスは「経験→学習→改善→成長」と進みますが、読解力が不足した状態では「経験→誤解→固定化→繰り返し」になります。その結果、表面上は「経験3年」であっても、実態は「経験1年を3回繰り返している状態」に近くなります。

この問題が厄介なのは、本人が「理解できていないこと」自体に気づけない点にあります。自分の理解のズレに気づくには「自分の行動を客観視する力」と「他者からの指摘を受けて修正する力」の両方が必要で、この力が弱いと、誤解したまま作業を進める・指摘されても腹落ちしない・防衛的になり指摘を認めない、という状態に陥ります。つまり本人が「認めない」のではなく、「認められる状態にない」というのが実態に近い表現です。

なお、この問題はエンジニア職に限りません。営業・事務・企画など、あらゆる職種に読解力の低い人材が存在する可能性があります。しかし「なぜ指示が理解されないのか」という問いは、多くの現場で部門を越えて共有されないまま放置されています。

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OJT担当者の約80%が指導負担の増加を実感している

新人エンジニアの「解決はできても理解していない」状態は、現場のOJT担当者にも次のような形で影響を与えています。

  • 同じような質問が繰り返される:一度説明した内容も、理解が定着せず同様の質問が再発する
  • 前提知識の説明から必要になる:エラーやドキュメントの内容そのものより先に、読み解くための前提知識から教える必要が生じる
  • 指導に時間がかかる:一つの課題解決にかかる説明時間が、想定より長くなる

この結果、OJT担当者が本来の業務に割けるはずの時間が減少し、組織全体の生産性低下につながるケースも見られます。OJT担当者の負担増加は個人の負荷だけではありません。実際に、約70%のOJT担当者が「離職・異動を考えたことがある」と回答しており、組織全体の人材流出リスクにも直結する課題です。詳細調査データはこちら

生成AI時代の新人研修に必要な3つの対策

これまで見てきた課題に対して、ジョブサポートでは次の3つの対策が有効だと考えています。

①理解する力(読解力):コードを書く前に、「読む力」を鍛える研修設計が重要です。エラーメッセージやドキュメントを正しく理解するための訓練を、カリキュラムに組み込む必要があります。

②問いを立てる力:生成AIを使いこなせるかどうかは、実はAIの操作スキルではなく、「良い質問を立てられるか」「回答を鵜呑みにせず検証できるか」という、AI以前の基礎力に左右されます。研修時に「何を」「どう質問するか」自分で考える力を、人とのやり取りを通じて鍛えます。

③検証する力:AIや先輩から得た回答を鵜呑みにせず、自分の理解が本当に正しいかを自分で確かめる力です。アウトプットの正誤だけでなく「どのように考えたか」「どの情報を参照して判断したか」というプロセスを担当者が確認することで、この検証する力そのものを鍛えることができます。

ジョブサポートは、創業時から「答えを教えず、考える支援」をするという方針を軸に指導を行ってきました。研修中は生成AIを使用せず、人とのやり取りを通じて「理解する力」「問いを立てる力」「検証する力」の3つを鍛えるアプローチです。この力は、配属後に生成AIと向き合う場面でもそのまま活かされます。実際に、基礎を理解し自力でエラー調査ができる新人が配属された場合、約98%のOJT担当者が「負担は減る」と回答しています。

■関連サイト

よくある質問

新人エンジニアが生成AIのエラーを自己解決できないのはなぜですか?

A. 生成AIの操作スキルが不足しているのではなく、エラーメッセージやドキュメントを正しく読み取る「読解力」が不足していることが主な原因です。専門用語が読み取れない「読めない」問題だけでなく、最後まで目を通さずAIの回答に飛びついてしまう「読み飛ばし」も同様に大きな要因です。AIは「回答を提示するツール」に過ぎず、その回答を理解できるかは利用者の読解力と読む姿勢に依存します。

Q. OJT担当者の負担を減らすにはどうすればいいですか?

A. 調査では、基礎を理解し自力でエラー調査ができる新人が配属された場合、約98%のOJT担当者が「負担は減る」と回答しています。配属前の研修段階で「理解する力」「問いを立てる力」「検証する力」を育てておくことが、現場の負担軽減につながります。

Q. 読解力はどうすれば鍛えられますか?

A. コードを書く前に「読む力」を鍛える研修設計が有効です。動画教材に頼らず、テキストを読んで自分で動く場面を意図的に多く設計することで読解力の課題を早期に発見、対処することができます。

まとめ

生成AI時代の新人エンジニア育成では、次の4つの実態が明らかになりました。

  1. 新人エンジニアの約9割が生成AIを日常的に活用している
  2. 「解決はできても理解していない」状態が新たな課題になっている
  3. 課題の本質は生成AIではなく「読解力」の不足にある
  4. 読解力不足を放置すると、"経験年数"だけの人材を生んでしまう

この状態はOJT担当者の負担増加(約80%が実感)や離職リスク(約70%が離職・異動を意識)にも直結しており、個人の資質の問題ではなく、組織として向き合うべき課題です。新人研修の段階で「理解する力」「問いを立てる力」「検証する力」を育てておくことが、配属後の負担を構造的に軽減する現実的な解決策になります。

調査結果の全データと研修プログラムはこちら

本記事で紹介した内容をもとにした研修プログラム・調査レポートを無料で公開しています(AI活用の実態データ/新人がつまずくポイントの整理/具体的な研修設計例)。

新井啓央
新井啓央
2013年から代表取締役の代わりにジョブサポートの経営を行っています。会社経営をしながら研修事業の営業窓口としても企業の担当者ともやり取りを行っています。

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