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現場任せのOJTはもう限界。指導担当者の7割が「限界」を感じる今、組織がすべきこと

この記事の結論

OJT担当者1,004名を対象にした調査では、指導担当者の約7割が通常業務と育成の兼任に「限界」を感じ約7割が育成負担を理由に転職・異動を意識したことがあると回答しました。新人、若手が育たない原因はOJT担当者個人の力量ではなく、育成を一人に依存させる組織構造そのものにあります。本記事では、調査結果をもとに、育成を仕組みとして機能させるための4つのポイントを解説します。

本記事のデータは、5年以内に新卒・若手(入社1〜3年目)エンジニアの教育を担当した1,004名を対象に実施した調査「Z世代エンジニアに対するOJT指導の難易度と指導担当者の負担の実態」に基づいています(調査期間:2026年4月28日〜29日、PRIZMAによるインターネット調査)。※本調査結果は、PR TIMESでも報道発表しています。[詳細はこちら]

指導担当者の7割が「辞めたい」「異動したい」と感じている

「OJT担当者を任命したのに新人が育たない」「1on1やメンター制度を導入したが期待した成果が出ない」——このような課題を抱える企業は少なくありません。

弊社が実施した調査では、指導を担当した新卒・若手エンジニアの主体性や責任感に「課題を感じる」と回答した指導担当者は約87%(よく感じる31.7%+ときどき感じる55.3%)にのぼりました。さらに、育成負担が原因で自身が「会社を辞めたい」「職場を異動したい」と感じたことがある指導担当者は約66%(頻繁に感じる22.2%+たまに感じる43.9%)、通常業務と育成の兼任に「限界を感じている」担当者は約73%(非常に限界を感じている12.6%+ある程度限界を感じている60.2%)にのぼっています。

制度を導入すること自体は重要です。しかし本当に重要なのは、「どのような組織を目指し、そのために制度をどう活用するか」という視点です。本記事では、新人育成を仕組みとして機能させるための4つのポイントを紹介します。

① 若手の「受け身姿勢」は個人ではなく構造の課題と捉える

受け身姿勢とは、指示があるまで自ら動かない、教えてもらうことを待つといった若手エンジニアの行動傾向を指し、調査では特定の企業に限らない業界共通の課題であることが分かっています。

調査では、教えてもらうのを待つ「受け身」な若手エンジニアが多いと感じる指導担当者が約85%(強く感じる31.9%+やや感じる53.5%)にのぼりました。また、指導の負担や難しさを感じる項目としては、「指示があるまで動かない、自ら課題を見つけようとしない(受け身)」が38.1%でトップ、「生成AIの出力を鵜呑みにし、自分で根拠や仕組みを理解しようとしない」も31.3%を占めています。

これは特定の企業や個人の問題ではなく、業界全体に共通する構造的な課題です。受け身の姿勢が常態化すると、指導担当者は本来の技術教育に入る前に「仕事への向き合い方」から指導せざるを得ず、業務負担が増大します。まず経営層・人事がこの実態を「個人の資質の問題」ではなく「組織として対処すべき構造課題」として認識することが、対策の出発点になります。

②ハラスメント不安による「指導の萎縮」を防ぐ仕組みをつくる

指導の萎縮とは、指導担当者が「パワハラと言われるのではないか」という不安から、業務上必要な指摘や注意を躊躇してしまう状態を指します。

調査では、新卒・若手エンジニアの指導において「パワハラと言われるのではないか」と不安を感じて指摘を躊躇したことが「ある」と回答した指導担当者は約75%(よくある18.5%+ときどきある56.0%)にのぼりました。

技術を教える以前に、指摘やフィードバックの伝え方そのものに神経を使わざるを得ない状況が、指導現場の負担を押し上げています。指導側が萎縮し指摘をためらう状態が常態化すると、若手エンジニアは自分の課題に気づけないまま成長が停滞し、次の指導者が育たないという悪循環にもつながりかねません。

ここで重要なのは、「ハラスメント」と「インシビリティ(無礼・配慮不足)」を区別して捉えることです。この区別がないまま「ハラスメントと言われるかどうか」だけを判断基準にしてしまうと、本来は伝え方を工夫すれば済むはずの指摘も指導担当者の中で「言わない方が安全」という選択に流れてしまいます。インシビリティとは、明確な悪意はないものの、相手への配慮を欠いた言動や態度を指します。指導担当者の言葉遣いだけでなく、新人側の返事の仕方や報告の姿勢がインシビリティに当たるケースも少なくありません。ハラスメントか否かの二択で身構えるのではなく、「インシビリティが起きていないか」という視点を組織で共有することが、指導担当者の過度な萎縮を防ぎながら、必要な指摘を行いやすくする土台になります。

そのうえで、指導担当者個人の伝え方の工夫に頼るのではなく、「何を」「どう」フィードバックするかの基準を組織としてあらかじめ定義し、指導担当者が安心して指摘できる土台を用意することが重要です。

③ OJT担当は経験年数ではなく「役割を担えるレベル」で任命する

OJT担当の適性とは、勤続年数の長さではなく、業務を体系的に教え、相手の理解度を確認しながら指導できる能力を指します。

調査では、指導が難しいと感じる内容として「本人の学習意欲を引き出し、キャリア形成や目標設定を支援すること」が42.6%、「指示や仕様書の意図を正確に読み取る『読解力』を身につけさせること」が34.9%と、いずれも技術指導そのものより一段上の役割が求められている実態が見えます。

多くの企業では「入社3年目になったから」という理由でOJT担当を任命していますが、教える力と経験年数は必ずしも一致しません。経験年数ではなく、組織として定義した等級や能力基準を満たした人を任命することが重要です。ホワイトペーパー「新人エンジニアの生成AI利用実態と指導負担」に関する調査

④「技術以前の土台作り」を配属前・外部研修で切り分ける

技術以前の土台作りとは、自走力(問題解決能力)やヒューマンスキルなど、技術指導の前提となる基礎的な姿勢やスキルを、現場配属前の段階で育成しておく取り組みを指します。

調査では、配属前の外部研修で技術スキル以外に身につけてきてほしいこととして「わからないことを自ら調べて解決に導く問題解決能力(自走力)」が51.6%で最多となりました。また、外部の育成支援サービスに期待する内容としても「ヒューマンスキルの育成」が46.7%、「自走力の育成」が39.4%と、専門的な技術習得以上に重視されています。

一方で、組織からのサポートを「十分感じている」と回答した指導担当者は約63%(とても感じる15.4%+ある程度感じる48.1%)いるにもかかわらず、前述の通り約73%が指導体制に限界を感じているというギャップも調査から見えています。これは、サポートの「量」ではなく「内容」が現場のニーズとずれている可能性を示唆しています。調査の全データは【無料ダウンロード】指導担当者の疲弊を防ぐ“自走型育成”とはでご覧いただけます。

実践的な技術指導は現場のOJTで、自ら考え・調べ・動く姿勢の土台は配属前の育成(社内研修・外部研修)で構築する。この役割分担を組織として設計することが、指導担当者の負担を構造的に軽減する現実的な解決策です。

OJT担当一人に育成を任せる組織には限界がある

OJT担当は新人育成の中心的な存在ですが、育成の責任を一人で負う存在ではありません。現場・上司・人事・経営層がそれぞれ役割を分担し、組織全体で新人育成を支える仕組みを構築することが重要です。

役割

育成における責任範囲

現場

日々の技術指導・業務支援

上司

育成方針の確認・評価

人事

制度設計・相談窓口・組織改善、配属前研修の企画

経営層

育成方針の明確化、指導担当者の貢献を評価に反映する仕組みづくり

それぞれが役割を果たすことで、OJT担当だけに負荷が集中する状況を防ぐことができます。特に、指導担当者への貢献が評価・等級に反映されにくい組織では、指導担当者はキャリア上のメリットを見出しにくく、離職リスクがさらに高まる点にも注意が必要です。

よくある質問

Q. OJT担当者の離職や異動希望が増えているのはなぜですか?

A. 調査では、育成負担を理由に指導担当者の約66%が転職・異動を意識したことがあると回答しています。技術指導に加え、学習意欲の引き出しや読解力の育成など、本来の業務範囲を超えた負担が積み重なっていることが背景にあります。

Q. 若手がパワハラを気にして指導が甘くなるのを防ぐには?

A. 調査では指導担当者の約75%がハラスメント不安から指摘を躊躇した経験があると回答しています。個人の伝え方の工夫に頼るのではなく、フィードバックの基準を組織としてあらかじめ定義し、指導担当者が安心して指摘できる仕組みを整えることが有効です。

Q. OJT担当は経験年数で決めるべきですか?

A. 経験年数だけを基準にするのはおすすめできません。業務を体系的に説明できるか、相手の理解度を確認しながら指導できるかなど、「役割を担えるレベル」で任命することが重要です。

まとめ

新人育成を成功させるためには、制度を増やすことではなく、組織として育成の考え方を統一することが重要です。今回の調査からは、次の4つの視点が浮かび上がりました。

  1. 若手の「受け身姿勢」を個人ではなく構造の課題と捉える
  2. ハラスメント不安による「指導の萎縮」を防ぐ仕組みをつくる
  3. 等級・能力に応じてOJT担当を任命する
  4. 「技術以前の土台作り」を配属前・外部研修で切り分ける

指導担当者の約7割が育成体制に限界を感じ、約7割が転職・異動を意識している今だからこそ、「制度を導入する」ことから一歩進み、「育成が機能する組織づくり」に目を向けることが、持続的な人材育成につながります。

調査結果の全データはこちら

OJT担当者1,004名への調査から見えた、Z世代エンジニア育成の実態と負担の構造を詳しく知りたい方は、ホワイトペーパー「Z世代エンジニアに対するOJT指導の難易度と指導担当者の負担の実態」をご覧ください。

新井啓央
新井啓央
10年ほど前から代表取締役の代わりにジョブサポートの経営を行っています。会社経営をしながら研修事業の営業窓口としても企業の担当者ともやり取りを行っています。

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