マルチにこなすフルスタックエンジニア。どんなスキル、教育が必要?
IT系企業やエンジニアを多く雇用している企業では、人材育成の計画において、フルスタックエンジニアとして複数のスキルを習得させることは、今後のIT業界を生き抜く上で重要な戦略と言えるでしょう。フルスタックエンジニアの基礎知識やメリット、育成における注意点などを解説します。
目次[非表示]
- 1.ニーズが高まるフルスタックエンジニア
- 2.働く側のメリット
- 2.1.変化に対応できる
- 2.2.周りとの差をつけやすい
- 3.企業側のメリット
- 3.1.無駄な人件費がかからない
- 3.2.生産性向上につながる
- 4.フルスタックエンジニアを目指すには
- 4.1.学びながら経験を積み重ねる
- 4.2.心強いメンターを探す
- 5.器用貧乏にならないための注意点
- 6.スキル習得の目的が大事
ニーズが高まるフルスタックエンジニア
IT市場の規模拡大に合わせて需要が高まっているフルスタックエンジニアとは、どのような人材なのでしょうか。まずは、基礎知識を理解しておきましょう。
オールラウンドに活躍するITエンジニア
フルスタックエンジニアとは、ITに関するさまざまな開発を、自分1人でこなせられるエンジニアのことです。マルチエンジニアと呼ばれることもあります。
エンジニアと言えば、ネットワークエンジニアやシステムエンジニアなど、特定の分野で専門的なスキルを発揮する人材を指すことが一般的です。
しかし、ベンチャー企業など人材の少ない企業において、外注などに頼らずにIT系業務を内製化するためには、あらゆるIT分野に精通する人材が求められます。
そのような場面で最低でも1人いると助かるエンジニアがフルスタックエンジニアです。オールラウンドな活躍が期待できる、万能タイプのITエンジニアとも言えるでしょう。
フロントエンドからバックエンドまでの知識が必要
フルスタックエンジニアには、さまざまなスキルが求められます。ユーザーの目に触れるフロントエンドだけでなく、サーバーやデータベースなどのバックエンドに関する知識も必要です。
フルスタックエンジニアとして認められるために、プログラミング言語の習得は必須と言えるでしょう。最低でも一つの言語に精通していることが求められます。
バックエンド系のスキルとしては、ミドルウェアやOSに関する知識も重要です。それぞれ、種類が抱負にあるため、代表的なミドルウェアやOSに詳しくなっておく必要があります。
近年普及が進んでいるクラウドサービスのスキルも、習得しておくべきでしょう。システム開発のスピードが速まるクラウドサービスは、多くの企業が利用し始めています。
スキル転換やマルチスキルが求められる時代
オールラウンドな活躍を期待されるフルスタックエンジニアが求められる背景には、先端IT分野での人材不足があります。
経済産業省が2019年に公表した『IT人材需給に関する調査』によると、2018年の時点で、ITエンジニアは約22万人足りません。今後さらに増えることも予想されています。
人材不足に対応するためには、新たなIT分野にも通用するスキルへ、従来のスキルを転換しなければならないでしょう。
また、先端IT分野に関わる企業の課題が多様化・複雑化しているため、プロジェクトを統括するマネージャー職にも、マルチスキルが求められるようになってきています。
働く側のメリット
フルスタックエンジニアとして働くメリットを紹介します。自分自身の価値を高めやすく、将来性もあるエンジニアだと言えるでしょう。
変化に対応できる
フルスタックエンジニアは、習得しているプログラミング言語の数が多いほど、活躍できる場も広がります。
また、プログラミング言語には流行り廃りがあり、現在主流の言語でも、数年後には現場で使われなくなっている可能性もあります。
一つの言語のみマスターしていても、その言語が通用しなくなると、エンジニアとしての職を失うことにもなりかねません。
しかし、複数の言語に精通しているフルスタックエンジニアなら、そのような時代の変化にも対応できます。
周りとの差をつけやすい
数年前までは、1分野の業務に関するスキルのスペシャリストも、それなりに活躍できるシーンが用意されていました。
しかし、ここ数年の間で、Webサービス開発を簡単に進められる仕組みがいくつも登場しているため、スペシャリストの価値が下がっています。
今後は、フルスタックエンジニアのように、より多くのスキルを身に付けているエンジニアが重宝され、周りとの差を付けていくことでしょう。
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企業側のメリット
フルスタックエンジニアを育てたり雇ったりする企業側にも、いくつかのメリットがあります。近年、注目を集めている理由を知っておきましょう。
無駄な人件費がかからない
IT企業においては、部署やプロジェクトごとにスペシャリストのエンジニアを配置し、集中して業務に取り組む形が、理想的な業務体制だと言えるでしょう。
しかし、ベンチャー企業やスタートアップ企業では、経済的な理由により人材をそろえることが難しいケースも少なくありません。
このように、多くの人員を雇えない場合でも、分野の垣根を越えて活躍できるフルスタックエンジニアを雇うことで、無駄な人件費をかけずに済みます。
新たに人材を雇えないような状況でも、現在雇用している人材をフルスタックエンジニアに育てれば、人件費を抑えることにつながります。
生産性向上につながる
開発の現場で、複数のエンジニアがチームを組むと、足並みをそろえるのに苦労することがあります。
エンジニア自体のスキルは高くても、他の人の作業待ちやミーティングが繰り返されると、必然的に全体のスピードは落ちるでしょう。
しかし、フルスタックエンジニアが1人で業務を担当すれば、チームを組むことで起こりうる遅延が発生しなくなるため、生産性の向上につながります。
途中でトラブルが発生しても、フルスタックエンジニアが自分の判断で対処できるため、解決する手間がかかりません。
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フルスタックエンジニアを目指すには
フルスタックエンジニアになるために意識すべきことを解説します。資格などが特に存在するわけではないため、身に付けたいスキルをしっかりと選ぶことが重要です。
学びながら経験を積み重ねる
フルスタックエンジニアに求められるスキルは、実際に現場で役立てられる知識や経験です。
多くのスキルを習得していたとしても、企業が求めるスキルにマッチするものが少なければ、フルスタックエンジニアとは名乗れないでしょう。
したがって、企業側が求めているスキルやスキルレベルを確認しつつ、実際の業務でさまざまな経験を積みながら、フルスタックエンジニアになるための学びを進める意識を持つことが大切です。
一つのプロジェクトで複数のスキルを習得できれば、他のプロジェクトでも横断的に発揮できるスキルを習得できるため、より実践に向いたフルスタックエンジニアを目指せます。
心強いメンターを探す
メンターとは、指導者や助言者のことを指します。フルスタックエンジニアを目指すなら、信頼に足るメンターを決め、より的確な指導を受けるとよいでしょう。
メンターになりうる身近な存在としては、会社の上司や先輩が挙げられます。第一線で活躍する現役エンジニアであることが条件です。
社内でメンターになりそうな人がいない場合は、社外のエンジニアやスクールにアプローチするのも選択肢です。費用が発生する可能性はあるものの、より高いレベルの指導を仰げるでしょう。
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器用貧乏にならないための注意点
やみくもにスキルを増やしても、企業の役に立てなければ、エンジニアとして活躍できません。フルスタックエンジニアを目指すにあたり、注意すべきポイントを紹介します。
強みを持つ
フルスタックエンジニアになるには、より多くの知識をインプットしなければなりませんが、特定の分野に強みを持てるような学習を進めることが重要です。
習得したスキルレベルが総じて低いと、現場で通用するスキルを全く有していないという状態になりかねません。
また、強みを持つべきスキルは、企業や業界の需要により変化します。最新情報には常にアンテナを張り、常に業界全体を俯瞰する意識を持つことも大切です。
活躍できる場を知る
フルスタックエンジニアとして自信が持てる状態になったとしても、あらゆる企業から求められる存在であるとは限りません。
IT業界の中でも、特にフルスタックエンジニアが活躍できるのはどのような開発シーンなのかを、しっかりと確認しておくことが重要です。
フルスタックエンジニアが求められる分野としては、近年注目を集めているIoT(モノのインターネット)、DX化のシステム開発が挙げられます。
IoT、DX化の開発では、プログラミングをはじめ、ネットワーク・OS・組み込みなどの知識が不可欠です。それぞれの分野に精通していれば、十分に力を発揮できるでしょう。
■関連サイト
スキル習得の目的が大事
フルスタックエンジニアとは、分野を問わずマルチに活躍できるITエンジニアです。時代の変化に合わせて、複数のスキルを持つエンジニアが求められています。
企業がフルスタックエンジニアを育てる場合は、自社にとってメリットのあるスキルを習得させること、エンジニア個人として成長を実感できることも理解させることが重要です。優秀な人材を確保できれば、人件費の削減や生産性の向上につなげられるでしょう。